3人のエンジェル

1996/06/30 有楽町スバル座
パトリック・スウェイジとジョン・レグイザモの堂に入ったオカマぶりは見もの。
ウェズリー・スナイプスはちょっと……。by K. Hattori


 『ゴースト/ニューヨークの幻』や『ハートブルー』で骨太な男の魅力を見せたパトリック・スウェイジと、黒人アクションスターのウェズリー・スナイプス、若手のジョン・レグイザモらがドラッグクイーン(女装したオカマ)を演じるハートウォームなコメディ映画。なんとスピルバーグ映画会社であるアンブリン製作だから驚く。ニューヨークの予選を勝ち抜いた3人のオカマが、ハリウッドで開かれる全米大会目指して車で旅をする話だ。似たような映画にはオーストラリア映画『プリシラ』があった。オカマ3人の人物配置など、この映画は『プリシラ』からの影響がそこかしこに感じられる。

 『プリシラ』はオカマ3人の珍道中を通じて、さまざまな人間の業や人生模様を感じさせる傑作ロードムービーだったけど、『3人のエンジェル』は主人公たちの描き方もステレオタイプなオカマっぷりから抜け出せていないし筋立てもマンガチック。前半ははっきり言って観ていてもつまらないし、不細工な『プリシラ』のイミテーションを見ているようで不愉快になることも多い。ところが、彼らの車がエンコして小さな町に何日かの宿をとるところから、この映画は『プリシラ』を脱し、ロードムービーを脱し、アメリカ映画に典型的なスモールタウン・コメディへと変貌してゆく。

 都会から来た主人公が小さな田舎町で足止めされ、そこに暮らす人々の田舎くさい暮らしぶりに反発を覚えながら、徐々にその中にある素朴な人情や人間味に魅力を感じて変わって行く。同時に町の人たちも主人公によって閉鎖的な空気から抜け出し、新しい関係を築いて行く、というのがスモールタウン・コメディの定石。主人公の男が町の女の子と恋に落ち、最後は町に残るというマイケル・J・フォックスの『ドク・ハリウッド』あたりが、このジャンルの典型的な映画。『恋はデ・ジャヴ』なんかも似たような映画ですね。要するにジャンル・ムービーなんです。『3人のエンジェル』はこのジャンルの映画として定石を押さえているし、中盤から後半にかけては比較的よくできています。

 田舎町の旧態依然とした様子の典型として、妻に暴力を振るう亭主というのが出てきます。夫の暴力に涙を流しながら堪え忍んでいるのがストッカード・チャニング。彼女は『アンカーウーマン』にインテリの女性ニュースキャスターのマーシャ役で出演していますよね。『スモーク』には、ハーヴェイ・カイテルの前妻の役で登場していました。『アンカーウーマン』では胸を張って辺りを睥睨している感じがありましたが、この映画では長身のパトリック・スウェイジと並んでいるせいか、すごく小柄な女性に見えたなぁ。

 スナイプスが映画の話をしていると、突然おばあさんが話しはじめる場面も好き。古い映画館の事務所には、『バンド・ワゴン』のポスターが貼ってありました。


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