サドン・デス

1996/06/02 丸の内ピカデリー2
ヴァン・ダム主演のホッケー・スタジアム版『ダイ・ハード』。
撮影も兼ねたピーター・ハイアムズが職人の技を見せる。by K. Hattori


 アイスホッケー決勝戦が行われているスタジアムで、観戦に訪れた貴賓席の副大統領一行がテロリストたちの人質となる。犯人達が政府に突きつけたばく大な身代金。もし要求に従わなければスタジアムは爆破される。観客達はガラス張りの貴賓室の中でそんな騒動が起こっていることを知らないままゲームに熱中。しかしただひとり、主人公の男だけはこの危機状態を察知して、ただひとり犯人達に戦いを挑む。要するにこの映画もまた、あまたある『ダイ・ハード』亜流映画のひとつなのです。

 主人公ダレンを演じたジャン=クロード・ヴァン・ダムは、当代きってのB級アクションスターです。監督は彼と『タイム・コップ』でコンビを組んだピーター・ハイアムズ。二流三流の役者と監督ならいざ知らず、なんで今頃このクラスの映画人がヒット映画の亜流を撮らなければならないのか僕は怪訝に思ったし、正直言ってあまり映画の内容に期待していませんでした。予告編で見せたアクションシーンはすごかったけど、しょせんはあそこ止まりだろうと思っていたわけです。

 「人生はチョコレートの箱のようなもの。開けてみるまでわからない。映画も同じ」とはミュージカル『フォービドゥン・ハリウッド』の狂言回し、フォレスト・ガンプ君の台詞ですが、この映画もまさにそう。フタを開けたらびっくり仰天。なんだこりゃ、面白いじゃないか。

 犯人達の設けたタイムリミットである試合終了時刻が刻一刻と近づいてくる。あわやスタジアムが大爆発かと思わせておいて、試合は延長戦に突入。これはタイトルからわかっていたことなんだけど、わかっていることで観客をハラハラドキドキさせるんだからすごいよね。まぁあれだけ短時間にスタジアム内の爆弾が見つかるわけないとか、彼は消防士であって爆発物処理のプロとは別物なんじゃないかとか、なんであんなに身体がよく動くんだとか、そういったことは言いっこなし。彼は主人公でスターなんだから、そのぐらいのことは当たり前なのです。

 この映画がすごいのはヴァン・ダムが事件の発生に気づく最初の場面で、いきなりマスコットのぬいぐるみとの大格闘を持ってくるあたり。普通アクション映画では、主人公の格闘場面がクライマックスに来るもんです。アクションスター主演映画で最初に格闘を持ってくると、最後の見せ場がなくなるからね。それがいきなり長々とぬいぐるみと戦うんだから、僕はこの後どうなることかと思いました。これは最後のクライマックスであれだけすごいものを見せられてしまうと納得なんだけど、終盤からラストにかけての活劇は、撮影技術に自信がない限りあり得ない展開ですね。この映画は、撮影監督も兼ねたハイアムズの剛腕ぶりが冴えています。


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