モータル・コンバット

1996/03/23 日比谷映画
クリストファー・ランバートは出演する映画を選ばない。
テレビゲームを原作とするCGアクション映画。by K. Hattori


 予告編を観て、これはジャン=クロード・ヴァンダムの『ストリート・ファイター』に、ラッセル・マルケイの『ハイランダー』や『シャドー』の味わいをまぶし(クリストファー・ランバートも出演しているし)、さらにCGをガンガン使ってハイテンションなノンストップ活劇を見せてくれるのかと期待していたのだが、こうした期待は得てして裏切られるものである。面白かったのはハリウッドで活躍するアクションスターが「彼の拳法は偽物」とマスコミに叩かれて奮起するという、まるきりヴァンダムを意識したエピソードが作られている点。この役は彼自身にやってほしかったなぁ。

 こんな映画になぜか出演しているクリストファー・ランバート。この役者は最近、B風味のアクション映画にしか出演しなくなってしまいました。やはりデビュー作がターザンだったことが祟っているのでしょうか。『ハイランダー』シリーズを3作も撮ってしまったことを考え合わせると、案外この手の映画がとっても好きなのかもしれません。今回はついに神様の役ですから、ジャングルの野生児グレイストーク卿も変われば変わるものです。

 映画ははっきり言って、よくわからなかった。この世の支配権を巡って人間と魔王が格闘技の試合をするという物語は単純なのだが、各エピソードの焦点がバラバラで、クライマックスで一気に登りつめて行く盛り上がりに欠ける。中心になる3人の中でも、結局誰が主人公なのかとっさにわかりかねるのは問題だろう。中国人のリュウ・カンが主人公ということなのだろうが、主人公を立てるエピソードが乏しすぎる。魔界の王女に気に入られる程度では、いかにも取ってつけたようなんだよね。この役をもっと名のある俳優が演じれば、また雰囲気も違ったんでしょうけどね。髪の毛ぼさぼさの地味な役者じゃ、観客の視線を集められないよ。

 映画の見どころは随所に登場するCGやデジタル合成などの特殊効果なんだけど、これはずっと観ていると目と脳がだんだん麻痺して刺激がなくなりますね。それだけにこうした技術をどうやって物語の中に取り入れて行くかが問題になるんでしょうが、この映画では特殊効果の登場する場面の全部が同じような絵柄でメリハリがない。ひとつひとつの絵のテイストはラッセル・マルケイに通じるものがあると思うんだけど、マルケイの映画にあるスピード感がこの映画にはないのです。これなら、予告編の方がよほど上手く出来ていたと思うなぁ。

 武術の試合で世界の運命を決めるという割には、登場人物達に悲壮感がないし、道具立てがちゃちい。試合の数をもう少し絞って、それぞれに見せ場を作って欲しかった。腕四本のゴロー将軍なんてよくできてたんだから、あのあっけないやられ方は残念。


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