アメリカン・プレジデント

1996/03/10 日劇プラザ
セックス中毒だったマイケル・ダグラスがアメリカ大統領を演じる。
アネット・ベニングの大人の色気にくらくら。by K. Hattori


アメリカン・プレジデント

 セックス中毒で入院していたマイケル・ダグラスが大統領を演じると聞いたときは一瞬新手の冗談かと思いました。ダグラスと言えば『危険な情事』や『氷の微笑』以降、スケベかプッツンの役にしか縁がなかった人ですもんね。『フォーリング・ダウン』なんてはまり役だったなぁ……。今回はやもめ暮らしのアメリカ大統領が美人ロビイストと恋をして、という内容だそうなので、どうせいつものようにダグラスが腕力にものをいわせて女性を歯牙にかけるんだろうと思っていたら、なんだか映画を観て心地よく期待を裏切られたた感じです。

 相手役のアネット・ベニングが素敵でした。はっきりオバサンと言える年齢ですけど、年をとったことがきちんと人生経験やキャリアになっている人だと思います。ベニングというと『グリフターズ/詐欺師たち』『心の旅』『バグジー』などを観てきましたけど、彼女は家庭を持って、子供を生んで、役者として一回り大きくなったんじゃないでしょうか。彼女が寝室で大統領にせまる場面はこの映画の白眉。年増女の魅力が炸裂して、めまいがしそうでした。(しまった、こんなことなら『めぐり逢い』も観ておくんだった! あの映画が観られなかった理由の半分は、僕の焼き餅が原因です。)

 監督のロブ・ライナーは前作『ノース/小さな旅人』の低調が嘘のような、引き締まった演出ぶりでした。オープニングが『ア・フュー・グッドメン』に似ていると思ったら、脚本も同じアーロン・ソーキンだったのね。こうなるとライナー監督は脚本次第という仮説は、まだ生かしておいてもいいな。ホワイトハウスが舞台のコメディーなら、最近はアイヴァン・ライトマンの『デーヴ』が印象に残るけど、あれは現代風にひねりにひねったエピソードが山盛りで大いに楽しめた。(オリバー・ストーンの出演場面で笑わない奴はアホだ!)一方『アメリカン・プレジデント』はお話がいかにも古風。台詞にフランク・キャプラの名前が出てきたくらいだから、作っている方も意識しているんでしょうね。

 マイケル・J・フォックス、マーチン・シーン、リチャード・ドレイファスなど、ひとりで主役が張れそうな人たちがゴロゴロ。でも、登場人物たちの中で一番の大物は誰だか知っていますか? それは選挙担当参謀コダックを演じたデビッド・ペイマーです。彼は『ニクソン』の中でも大統領の側近を演じていましたから、ホワイトハウスでは一番の古顔なんですね。ペイマーは僕は好きな俳優で、『シティー・スリッカーズ』『ミスター・サタデー・ナイト』『クイズ・ショウ』などにも出演している名バイプレーヤーです。近々公開される『ゲット・ショーティ』にも出演しているとのことで、僕は楽しみにしています。『シティーホール』も面白そう。


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