ゴールデンアイ

1996/02/04 日劇東宝
ご存知007シリーズ最新作はピアーズ・ブロスナンがジェームス・ボンド。
偉大なる永遠のワンパターンにも芸がある。by K. Hattori


 マンネリだろうがワンパターンだろうと構わない。世の中にはそれを求めている人たちもいるのです。ヘタにギャンブルしてクズみたいな映画をつかまされるぐらいなら、新鮮味はなくても確実に面白い映画を劇場で観たい。この映画はそんな観客の要望にしっかりと応えてくれます。

 オープニングでちゃんとジョン・バリー風の音楽に合わせて007が登場し、彼を狙う銃口めがけて振り向きざまに1発。画面が上から真っ赤に染まって行く。うーん、これこれ。歌入りのテーマ曲にイメージ風の映像でメインタイトルを流す映画なんて、今時あまり見かけないぞ。これもまた、わざわざ古風なスタイルを守っているところがよろしい。

 この後、ダムの上からいきなり数十メートル下に向けたバンジージャンプが飛び出し、その後はノンストップで続くアクションのつるべ打ち。アクションを描くところは描き、物語を語るところは語り、そのバランスも上々。手に汗にぎるスリルと、抱腹絶倒のユーモアが隣り合わせになった構成は、さすがにシリーズ物ならではの手慣れた部分。

 冷戦が終わった今になって、大真面目に大がかりなスパイアクションをやってみせる図々しさも大したもの。冷戦時代の幼い観客にとっては「ひょっとしたら」と思えた筋立ても、全てがつまびらかにされてしまっている今は最初から「んなわけないって」ってことになってしまう。その逆手をとって、観客が考えること以上にアクションをエスカレートさせてしまう態度には脱帽。だいたいたったひとりで敵地に乗り込めという命令も無茶だけど、それを待ってましたと敵地に乗り込む主人公も馬鹿そのもの。とにかく、何か行動を起こすときに主人公は躊躇しない。裏切り者のかつての同僚から「お前は女王陛下の忠犬か」と罵られても言い返さない。この男、何も考えない馬鹿なんです。

 新ジェームス・ボンドの大馬鹿ぶりは映画の冒頭から描かれていて、バンジージャンプもそうだし、滑走路の端からバイクで飛行機に飛び移るというのも馬鹿以外にはできない芸当。でも、そんな馬鹿が僕は大好き。後先考えない行動あってこそ、アクションはエスカレートする。ボンドが何か考える男なら、ロシアの街中を戦車の上に銅像のっけて走り回ったりしないよね。ここには大笑いしたよ。

 話にはよくわからない部分もあって、あれだけのドンパチを起こし、防衛大臣殺しの容疑もかけられているボンドがどうやってロシアからキューバに移動したのかは謎。2級プログラマーの姉ちゃん任せでもそれは無理だろう。だいたい、なんであの姉ちゃんが最後までボンドに同行する必然があるのか。でも、そんな疑問を吹き飛ばすアクションに満足したから、僕はこれらを全て不問にするのです。


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