ストレンジ・デイズ
1999年12月31日

1996/02/04 日比谷映画
1999年の大晦日が「20世紀の終わり」だと思っている大馬鹿映画。
間抜けな脚本家はジェームズ・キャメロン。by K. Hattori


 監督のキャスリン・ビグローが数年前に撮った『ハートブルー』という映画は、主演が『スピード』のキアヌ・リーブス、共演に『ゴースト/ニューヨークの幻』のパトリック・スウェイジと『プリティ・リーグ』のロリ・ペティというアクション映画で、銀行強盗の暴力とサーフィンのスリルとスカイダイビングの迫力が大画面に炸裂する傑作だった。僕はスカラ座でこの映画を観た後、しばらく身体の震えが止まらなくなるぐらい興奮したものです。

 そんなビグロー監督が久しぶりに撮ったのがこの映画。僕は大きな期待をしていたのだけれど、この映画、東京では3週間で打ち切りです。まだ観ていない僕はあわてて飛んでいった。ところが内容は、まぁ3週間で終わってしまってもしょうがないようなお粗末さだったのですね。

 そもそも1999年を20世紀最後の年だと勘違いしているような間抜けが脚本を書いているのだから、内容もこの勘違いと同じぐらいアタマが悪い。(21世紀は西暦2001年からです。)近未来の描写やセットには随分とお金がかかっただろうけれど、この話ってそもそも舞台を近未来にする必然性なんてないじゃん。小道具に新味を出したつもりなのかもしれないけど、お話に道具立てがかみ合ってこないから面白くないんだよね。

 お話はというと、殺人事件を目撃した女が口封じのために殺されるのだが、彼女が最後に主人公の手に事件の証拠を渡したことから、主人公が事件に巻き込まれる……、という昔から何本この手の映画があるんだというありふれたもの。映画はこのミステリーを縦糸に、元警官の主人公と彼の元恋人とのエピソード、他人の記憶を録画再生できる機械とそれを使ったトリックなどを絡めて行くのだが、これらが全部ばらばらでまとまっていないのが残念。ミステリーとしても、ラブストーリーとしても、SF風アクションとしても中途半端。

 主人公のレイフ・ファインズも『シンドラーのリスト』や『クイズ・ショウ』に比べると、美術セットに埋もれて存在感がまるでないんだよね。この影の薄い男が、(カクテルバーの永瀬正敏よろしく)振られた彼女との思い出ビデオを見ながらメソメソしているわけ。僕は最後までこの男に好感が持てない。ジュリエット・ルイス演ずる主人公の元恋人のことも、最後まで好きになれなかった。

 絵作りとしては所々にハッと息をのむような場面がないわけではないが、脚本や構成がこのレベルでは全体を救えない。僕は『ハートブルー』が好きなのでビグローの才能を云々したくはないが、これはきっと脚本が悪いのだろうと思ってクレジットをよくよく見れば、あれ? ジェームズ・キャメロン?


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