バッドボーイズ

1995/11/28 有楽町スバル座
黒人刑事コンビが活躍する胸のすくような痛快アクション。
物語の弱い部分も強引にねじ伏せる。by K. Hattori



 マデリーン・ストウやアンディ・マクドウェルが主演した女流ウェスタン『バッド・ガールズ』とは何の関係もない、黒人の二人組刑事が主人公のアクション映画。内容的には水準程度のデキなんだけど、詰めが甘くて水準以上のデキにはなっていない。アクションの切れとテンポが悪くて、スピード感に欠けるのだ。こういう軽い展開の話にテンポが欠如していることはほとんど致命的。主役二人の役割分担もわかりにくく、ここはマンガチックでもいいから極端な人物造形でふたりの性格を明確にしてほしかった。そうそう、目撃者の女の性格も、僕にはあまりよくわからなかったなぁ。これに比べると、やっぱり『リーサル・ウェッポン』のリチャード・ドナーは上手かった。比べてもしょうがないけどね。

 親の遺産で裕福に暮らしているくせに趣味で薄給の刑事稼業をしているかに見える男と、貧乏人の子沢山で家族思いの刑事が組んだ迷コンビ。キャラクターとしては金持ち刑事の造形がいまいち弱い。

 警察が押収した麻薬を犯罪者が強奪するというアイディア自体は別に目新しいと思わないんだけど、導入部分の強奪シーンは映画の中で一番スリリングな部分。テキパキとたたみ掛けるような演出でスピーディーに仕事が進んで行きます。ただ、この映画の見せ場はこの場面だけで、中盤から終盤にかけてはほとんど面白い場面がない。黒人刑事コンビの漫才のような掛け合いも、ひょっとして英語の意味がわかれば面白いのかもしれないけど、基本的にバーバルギャグは字幕を読んで笑う物じゃないからなぁ。唯一おかしかったのは、アルバムを見ているところに電話をかけて……、という古典的な取り違えのギャグで、これは掛け値なしに大笑いさせてくれる。結局、新しいことをするよりも、古典的な定石こそが強いのですね。

 いろんなアイディアが詰まっているわりには、それぞれのエピソードにパンチがなくて全体に消化不良気味。こうした展開の映画だと、場面のつなぎにはある程度の強引さが必要なんだけど、この映画には多少の無理を承知でゴリゴリ話を進めてしまうエネルギッシュさが感じられない。例えば、刑事ふたりが互いの立場を入れ替えて証人に接しなければならない理由なんかも、多少弱いような気がするんだよね。最初にあの女に会いに行くときはしょうがないけど、その後は事情を説明して正体を明かした方がいいんじゃないかしら。また、犯罪グループが証人を拉致しに来るけど、証拠を抹殺するのが目的なんだから、まずはすぐさま証人を殺してしまうのが自然なんじゃないかな。こうした苦しさって、登場人物がほんの1行か2行の台詞をしゃべるだけで解消できるんだけどなぁ。なんだか気の抜けたビールみたいな味のする映画だったぞ。


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