ボーイフレンド

1995/09/11 有楽町スバル座
ツウィギー主演、ケン・ラッセル演出の楽しいミュージカル映画。
話は他愛ないけど映像はとてもきれい。by K. Hattori



 わずか2週間の上映。しかも後半は昼間の上映がなく、最終回1回のみの上映に縮小されてしまった。この映画がこれだけの宣伝をして、それでもここまで冷遇されてしまうのが、現在のミュージカル映画の置かれている状況なのかなぁ……。なんて考えながら、この映画を観てきました。今回のリバイバル公開に関しては、「監督/ケン・ラッセル」「主演/ツウィギー」による1960年代のテイストがあふれるオシャレなミュージカルコメディ、というセンでの売りを狙ったのかしら。ん〜、2年ぐらい前にそのセンで渋谷のPARCOあたりでレイトショー上映すれば、そこそこの客は入ったかもしれない。でも、場所が銀座じゃねぇ。ヘラルドががんばって完全版の公開をしても、銀座の客層とこの映画の客層がずれているんだよね。ま、いいか。こんなことは映画の中身とはなんら関係ございません。

 この映画って、ミュージカル映画についてある程度の素養がないと、きっと本当には楽しめないんじゃないかなぁ。全部ひっくるめて、ミュージカル映画のパロディ、もしくは古き良きミュージカル映画へのオマージュになっている作品です。ご都合主義な筋立て、強引な展開、唐突に現れるレビューシーン。ミュージカルが苦手な人にとっては最も苦手なあらゆる要素が、一通り詰め込まれている。しかし、そこがミュージカル好きにはたまらなくおかしい。アシスタントの女の子が主演女優のケガが原因で突然主役に抜擢されるのも、彼女が劇団の花形役者にホの字なのも、最後にふたりが結ばれるのも、すべて見え見え。途中何度もひねりを効かせて観客をはらはらさせたりして、最後は収まるべきところに無理矢理収めてしまう性急さと乱暴さがたまらない。

 巻頭にあるMGMのトレードマークがそれだけで嬉しいし、ポリーがトニーを慕って歌う歌は『雨に唄えば』からの引用でしょうか。ふ〜ん。ポリーがデビー・レイノルズで、トニーがジーン・ケリーなわけね。でも、それよりこの映画に濃厚な影を落としているのは、ワーナーのミュージカル映画『四十二番街』でしょう。主演女優のケガで無名の女の子が大抜擢という筋立てもそうだし、座長がポリーを舞台に送り出すときの台詞「劇団員の生活が全て君にかかっている。スターになって戻ってこい」は、まんま『四十二番街』からの引用。加えて、幻想的なレビューシーンは露骨にバズビー・バークレー風で、レコード版の上で踊る場面は、忠実にコピーと言っても良いぐらい。こりゃいいや。他にもサイコロのダンスや、はしご段の場面なんかは素敵です。

 主演のツウィギーは、この映画にも出演していたトミー・チューンと83年に舞台で再会。そのミュージカル「マイ・ワン・アンド・オンリー」の録音では、ふたりの掛け合いの歌が聴けますよ。


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