恋人たちのアパルトマン

1995/08/11 シネマ・カリテ2
ヴァンサン・ペレーズとソフィー・マルソー主演のラブコメディ。
とにかくマルソーが可愛いんだ! by K. Hattori



 主演のヴァンサン・ペレーズって、クリストファー・ランバートを若くして、さらに上裕史浩緊急対策本部長をたして2で割ったような顔立ちですねぇ。ま、それはおいといて……。

 じつに楽しい映画でした。これは恋愛を主題にしたジェットコースタームービーです。主人公を乗せたコースターがカタカタと音を立てながらレールの頂上に達すると、あとは一目散にゴールめがけて突っ走ります。途中、山あり谷あり。小刻みに左右に振れながら、怖くならない程度のスリル満載で、観客を大いに楽しませてくれること必至。ただし、このコースターに載っているのはペレーズ演ずるアレクサンドルひとりだけで、相手役のファンファンことソフィー・マルソーはその外側にいる。これは、男の方が勝手にコースを作って、勝手に盛り上がって勝手に右往左往して勝手に結末を迎える、結構身勝手な映画ですね。

 観客は女性客が圧倒的に多かったんだけど、これは内容が女性向きだからじゃない。単に配給会社が女性向きのパブリシティを打っただけでしょう。僕が思うに、これはデート向きの映画だし、むしろ男性が観て楽しめる映画だと思う。男にはみんな、アレクサンドルみたいな身勝手なところがちょっとずつあるものです。男は女ほどリアリストじゃないから、心の中で突飛な幻影を勝手に作っていたりするんだよね。良く言えばロマンチストってことなんだろうけど、はっきり言って馬鹿なんです。この映画を観た女性たちは、アレクサンドルのあまりのオバカさんぶりに「ついていけない」と感じた人も多いのではないでしょうか。でも、それが男なのよ。

 シリアスな場面とコミカルな場面が入れ替わり立ち替わり出てくるのが、ほとんど快感になります。なんたっておかしかったのは、カフェでアレクサンドルがアイスクリームの上にのっているチェリーを触る場面と、ファンファンに一服盛る場面への流れ。アイスクリームがちっとも溶けなかったのが気になりましたが、それはま、いいや。

 アレクサンドルの勝手な盛り上がりが最高潮に達するのは、彼がファンファンの部屋の隣でマジック・ミラー越しの生活をはじめるあたりからですね。壁を壊しはじめたときからすでにおかしかったけど、ファンファンとアレクサンドル一緒にチャールストンを踊る場面は最高に笑わせてもらいました。痛ましいほど馬鹿なアレクサンドル。でも、気持ちはわかる。僕も同じ男ですからね。

 それにしても、『恋人たちのアパルトマン』というタイトルには工夫がない。『恋人たちの△△』というタイトルの映画がどれだけあるだろう。『愛と○○の××』と同じぐらい芸がないぞ。せっかくの映画が、タイトルのせいで艶消しです。


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