哭きの竜

1995/06/17 新宿シネパトス
人気麻雀マンガをビデオ映画化してハク付けのために劇場公開。
ストーリーにヒネリがなくて単調すぎる。by K. Hattori



 本当は『無頼平野』が観たかったんだけど、土日はお休みだったので、たまたま時間の合うこれを観た。たまたま初日だったこともあって、たまたま舞台挨拶と重なった。すべて偶然。ねらったわけではありません。ねらったわけではないけれど、ねらったようにこういう映画と出会えることのうれしさ楽しさ。これだから、映画を観るのはやめられない。

 なにしろ、ロケーションの場所がほとんど僕の住居のごくごく近所ばかり。新川・佃・霊岸島・茅場町・晴海。全部歩いて数分から10数分の距離。買物ゾーンやかつての通勤ゾーンじゃないか。特に、わが家から目と鼻の先の中央大橋や大川端リバーシティが何度も何度も登場するので、それだけで嬉しくなるなぁ。なにしろ、伝説の雀士・哭きの竜は、大川端リバーシティに住んでいるんだよ。リンコスの上だね、きっと。それにしても、いいとこに住んでるなぁ。やっぱり裏レートの麻雀で勝ち続ける人は、羽振りがいいなぁ。そうそう。竜が最後に甲斐組長と勝負をする雀荘あたりには、以前会社の帰りによく飲みに行ったものです。

 大川端リバーシティと中央大橋は、最近ドラマやCFでも頻繁に登場する人気スポットになっているようです。特に、隅田川上流にかかる永代橋から夕暮れに下流方向をながめると、林立する高層住宅群と中央大橋のシルエットが逆光に浮かび、その向こうに東京タワーがぽっかりと浮かぶという、絵に描いたようにデキスギた風景が出来上がります。ただ、この風景はもう見飽きたって感じですね。何しろ、僕はご近所ですから。

 大川端リバーシティと言えば、金子修介の『ガメラ・大怪獣空中決戦』で、最初は佃のリバーシティ地区をギャオスの巣にしようとしたんだそうですね。でも、風景としてまだ定着していないということで、結局東京タワーにしたらしい。リバーシティ地区は、『ガメラ』と同じ伊藤和典脚本の『機動警察パトレイバー2』にも登場し、武装ヘリが中央大橋の上をあたりからミサイルを発射して永代橋や隅田川大橋を爆破するという、これまた近隣住民には嬉しくてたまらない描写を見せてくれました。

 で、『哭きの竜』の本編ですが、ドラマ部分がどうしたって弱いので、ご近所の住人以外はすごくつまらない映画だと思います。主演の川本純一は線が細く、ひとたび雀卓を囲むと神のごとき振る舞いを見せる竜という男の鬼気迫る存在感を感じることができない。したがって、なぜやくざ連中が彼の存在に神経質になるのか、なぜ女は彼を帰りをひたすら待つのか、そうした描写だけが空回りし、空々しい印象さえ与えてしまうのです。また、麻雀場面の見せ方にももっと工夫が必要だと思う。結局、和田誠の『麻雀放浪記』を越える麻雀映画は存在しない。


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