リッチー・リッチ

1995/04/02 松竹セントラル1
本物の金持ちマコーレー・カルキンが世界一の金持ち少年を演じる。
邪気のないギャグの連発に素直に笑えます。by K. Hattori



 僕はマコーレー・カルキンが嫌いです。もっと正確に言うと、『ホーム・アローン』シリーズのカルキン君が大嫌いなのです。家の中では厄介者のくせに、何かと家族中に迷惑をかけ、好き勝手をやり、クライマックスではおとなに向かって説教までし、間抜けな泥棒を撃退して得意になっている、あのこまっしゃくれたガキをスクリーンで観るたびに、飛びかかって頬ぺたの2,3発はぶん殴りたくなるのですが、こんな僕は異常でしょうか。

 こんな僕ですが、カルキン君の新作『リッチー・リッチ』には大満足。彼がこの映画で演じているのは、世界一の大金持ち。ボンボン育ちで性格の悪さに拍車がかかっているかと思いきや、意外や意外、この映画のカルキン君は世界一素敵な男の子でありました。学業優秀、スポーツ万能、親孝行で優しい心の持ち主。みんなに好かれ愛される、文句なし、百点満点の少年なんです。彼が何より大切にしているのは、お父さんとお母さん。一番ほしいものは、なんと、一緒に野球ができる友だちです。

 この映画の第一の面白さは、主人公リッチー・リッチの途方もないお金持ちぶり。とにかく荒唐無稽。ばかばかしいまでに大げさに描かれる、マンガチックな金満家ぶりには、あきれかえって中途半端なやきもちなど焼くひまがありません。それにしても、あまりに彼我の差がありすぎると、人間の持つリアリティーはどこかマヒしてしまうようです。まったく現実味のないまでのお金持ちぶりも、ここまで徹底して描かれると、その中にある種のリアリティーが生まれます。リッチ家が現実にありそうなレベルの金持ちでは、この映画の面白さはぜんぜん出てこなかったでしょう。このあたり、観客に羨望の念を抱かせない、うまいやり方だと思います。

 いかにも家族向きの映画らしく、ストーリーもきわめて単純。主人公の父親が経営する会社の幹部が、会社を乗っ取るためにいささか荒っぽいクーデターを実行。この陰謀を、リッチーと友だちが共同でくい止める。このあたりも、適度にハラハラドキドキさせる活劇の連続。うまいものです。

 リッチ以外の登場人物も、みんな魅力的。謀反を起こす会社重役と警備担当者も、小憎たらしい悪党ぶりを遺憾なく発揮しているし、もちろん、ちょっと間抜けなところがあるのは定石通り。忠実な執事の意外な実力にニヤリ。主人公の両親の天真爛漫ぶりも、嫌味がない。「サイド・バイ・サイド」をハーモニーするあたりは最高です。主人公の友だちになる、下町の子どもたちの元気はつらつぶりも気持ちいい。女の子が姉御肌でかっこいいわ。

 最初から最後までマンガそのものの描写の中で、ホラ話の中に見え隠れする、人間の優しさと温かさにホロリとさせるあたりは、なんとも手堅いね。



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