勇気ある者

1995/02/12 みゆき座
ダニー・デビート演じる広告マンが軍隊の教育係になる人情劇。
監督は『プリティ・リーグ』のペニー・マーシャル。by K. Hattori


 〈女流監督〉などと一種の特別あつかいをするのが失礼なぐらい、ペニー・マーシャルは普通の監督です。『プリティ・リーグ』がフェミニズムの観点から語られたりしたこともあるけれど、この監督の根っこにあるのは、ひたすら健全な娯楽映画に対する愛情なんでしょうね。そんなマーシャル監督が、女ばかりに男ひとりという『プリティ・リーグ』とはうって変わり、男ばかりに女ひとりという映画を作りました。前回は野球チームが舞台でしたが、今回は軍隊が舞台です。主演はダニー・デビート。

 交通渋滞でプレゼンに遅れた主人公が、あっさり会社をクビになり、あげく職安に通う姿にひたすら同情。広告業界の人間って、ホント、つぶしがきかないんだなぁ。一時はニューヨークの売れっ子宣伝マンだった主人公も、幾度かのつまずきですっかり信用をなくし、職にあぶれてしまう。一度そうなると、世間の風は冷たい。彼に再びチャンスは来ない、二度と来ない。それが周囲にはわかる、一目でわかる。職安の窓口の女の人にだってわかるのに、ひとり彼だけにはわからない。身につまされます。

 ダニー・デビートは相変わらずうまいが、今回の映画は、彼を囲む俳優たちもいいね。グレゴリー・ハインズやジェームズ・レマーといった大人の俳優たちもいい芝居を見せるけれど、デビートの生徒を演じた若手の俳優たちに光るものがありました。

 中でも図抜けていいのが、リロ・ブランカート・ジュニアとカリル・ケイン。ブランカートはデ・ニーロの監督デビュー作『ブロンクス物語』で、ギャングにあこがれる青年を演じていた役者。今回はギャング抗争の巻き添えで妹を失い、街から逃げ出すように軍隊に身を投じるという正反対の役。もっとも更衣室で突然デ・ニーロ扮するジェイク・ラモッタの物まねを始めるシーンがあったりする。

 クラスいちの切れ者だが、デビートの推薦が仇になって逮捕されることになるルーズベルト・ホッブス。演じるケインは、映画『ジュース』でDJを目指す少年を演じていた人だそうな。あれは好きな映画だったから、こんなところで再びひょっこりと顔を見るなんてうれしいね。

 紅一点ステシィー・ダッシュが印象的だったけど、彼女は僕にとって新顔。居眠り小僧クレッグ・スポールダーは『グリフターズ/詐欺師』『プリティ・リーグ』『トゥルー・ロマンス』に出演していたっていうけど、いったいどこに出ていたのか誰か教えてください。カディーム・ハーディソンという役者も、『ハード・プレイ』『ガンメン』に出ていたんだって。くっそ〜、全然見覚えがないぞ。

 それにしてもなんだかんだ言いつつ、やっぱり軍隊を誇りにしているアメリカ人の健全さ。シェイクスピアを長々引用するシーンなど、こりゃ泣ける!


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