大失恋。

1995/02/12 丸の内東映
遊園地を舞台に何組かのカップルを描くグランドホテル形式の映画。
個々のエピソードが軽くなっているのが残念。by K. Hattori


 ひとつの遊園地を舞台に、そこを訪れる何組かのカップルを平行して描く、グランドホテル形式の物語。アイディアは面白かったけど、所々で舞台が遊園地から外に飛び出すところが気になるし、登場人物達の処理も粗い。カップルの数を限定して、各エピソードを少しずつ掘り下げると、もう少し面白い映画になったと思うんだけど……。

 印象に残る場面やエピソードが、ないわけではない。ただ、作り手がそれらを最後まで面倒見てくれていないことが、なんとなく歯がゆく、じつに面白くない。中途半端なまま放り出されているエピソードがなんと多いことか。中心になる物語がないのは仕方がない。『グランドホテル』だってそうだった。ただ、あの映画では各エピソードに、もっと過不足のない配慮があったよ。この映画の方法論は、良く言えば「欲張りすぎた」のであり、悪く言えば「下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる」式なのだ。

 そもそもタイトルが大嘘。あまり女性に縁のない僕としては、トレンディ系の美男美女カップルが次から次に登場しては、目も当てられない修羅場と破局を延々披露してくれるものだとばかり思っていたのだが……。そんな期待をしていた僕が悪うござんした。身を乗り出して見ていて損してしまったよ。センセーショナル(?)で大層なタイトルのわりには、中にあるのはチマチマした恋愛遊戯の寄せ集めではないか。最後まで〈失恋〉するカップルが一組も登場しないのに、『大失恋』とは馬鹿にしている。クソ〜。期待通りの映画だったら、さぞや胸のすく痛快な映画であっただろうに。勘弁ならんぞ。今後、大森一樹は要注意人物だ。

 それにしても、これだけたくさんのカップルを登場させている映画なのに、そこに現れているキャラクターの性質(性格にあらず)や雰囲気が、特定の方向に偏っているという印象を受けたのは、たぶん僕だけではないと思うぞ。ここからは、人間が持っている深くてドロドロした澱のようなものが、すっぱりと抜け落ちている。

 登場人物のことごとくが、まるで紙細工のように薄っぺらで表層的にしか見えてこないのだ。不倫だろうが、友人の恋人との抜き差しならぬ仲だろうが、そこには本質的な深刻さがまるで見えない。物語が本来持っているはずの深みから芝居だけが浮き上がり、役者がみんなヘボに見える。

 ひとりやふたりがヘボなら、それは役者がヘボなのかと疑うこともできようが、登場する全員がヘボだってのはいったい何が原因なのか。登場している役者の質はそんなに悪くないよ。これはズバリ、演出する監督がヘボなんじゃないのかな。アイディア倒れで、なんとも詰めのあまい映画だぞ。ただし、なぜか武田真治だけは素晴らしくよい。


ホームページ
ホームページへ