クレージー
メキシコ大作戦

1995/01/21 大井武蔵野館
メキシコのピラミッドに眠る古代インカの財宝を巡るコメディ。
大金を投じてそれに見合う傑作になっている。by K. Hattori


 クレージーの面々に加え、ドリフターズや藤田まことがゲスト出演。アメリカからメキシコまでロケーションした、豪華2時間42分の娯楽大作。これは文句なしに面白い。

 この映画はメキシコにあるピラミッドの秘宝をテーマにしていて、遺跡の発掘(盗掘)シーンもある。『大冒険』と合わせて観ると、そのまま『レイダース』になってしまうのだ。墓の中の迷路、落とし穴、ミイラの群、全部いっしょだ〜。もっとも、この手の物って、たぶんハリウッドの無声映画時代から繰り返し描かれているテーマなのでしょうね。『レイダース』を作ったスピルバーグも、この映画を作ったスタッフも、同じような映画資産の上に立って映画を作っている。

 前半の山場は、ひとつの死体をめぐって、植木・谷・ハナという3人の男が、図らずも関わりを持ってしまうシーン。このグロテスクでブラックなギャグの組立はとてもバタ臭く、僕はひとめでヒチコックの『ハリーの災難』を思い出した。ちなみに、僕は『ハリーの災難』で全然笑えなかったのですが、この映画では大いに笑わせてもらいました。ハナ肇が死体の処理に困ってウロウロするあたりでニヤニヤ、谷啓が婚約者の目から死体を隠すために上滑りになったちぐはぐな態度をとるあたりでクスクス、植木等が思いあまって死体を大学に運び込んだところで爆笑。藤田まことが現れて爆笑のだめ押し!

 後半の見どころはやっぱり遺跡発掘のシーンだろうが、それより僕は、植木等が飛行機から飛び降りるというスタント(もちろん吹き替えだろう)など、肉体を使ったギャグの数々に感動した。飛び降りと言えば、映画の終盤でアカプルコの断崖から海に飛び降りるシーンがあって、「ああ、アカプルコ」とヘンに納得したなぁ。

 とにかく全編ギャグ満載。68年の映画だというから、中には古びてしまった物もあるが、当時は絶対に新鮮なギャグだったはず。それを今の目で見て玉石混淆だと言うのは失礼だろう。しかし、全体でみればこれは絶対に面白い。今の観客が観ても、絶対に大笑いできるコメディ映画の大作だと思う。傑作だとは言わない。なぜなら、やっぱりこの上映時間はちょっと長すぎると思うよ。つまらないわけでも飽きたわけでもない。頭が満足する前に、肉体に限界がきてしまったのだ。『大冒険』と2本続けてみたせいもあるけれど、大井武蔵野館の固いイスだと、いささか尻が痛くなった。これが唯一の苦情。

 それにしても、突然挿入されるプロダクション・ナンバーの絢爛豪華なこと。ザ・ピーナッツや中尾ミエが歌って踊り、クレージーのお約束音楽ギャグもあり、うひひひひ。なんでしょうね、これは。僕はもう、嬉しくて嬉しくてしょうがないよ。


ホームページ
ホームページへ