エース・ベンチュラ

1994/11/11
プッツンしかけたギャグを持ちネタにするジム・キャリーに、
本物のプッツン女ショーン・ヤングがからむ爆笑コメディ。by K. Hattori


 オープニングでジム・キャリーが段ボール箱を蹴飛ばしながら現れたときから、僕は何事か期待して既にニヤニヤしていました。幸運なことに、この期待は裏切られません。ひたすら馬鹿で下品でやかましいこの主人公が、僕は大好き。ただし、あまり友人には持ちたくないけどね。映画の中に登場する黒人の刑事も同じ気持ちでしょう。ベンチュラを好人物だと評価しながらも、あの悪のりにはついていけないよ、まったく。

 一応物語はあるんですが、その物語を粉砕するごとく現れるジム・キャリーの芸。とにかく、身体も顔もよく動く人なのだ。彼が捜査のため、狂人に扮して病院に潜入するくだりがあるのですが、このあたり「どこが変装なんだ! いつものマンマだろうが〜!!」というハチャメチャぶりなのよ。ま〜ぁ、この病院のシーンは笑えたよ。依頼主が姉と称して彼に付き添って来るんだけど、この人も気の毒な弟を持った姉の顔をぜんぜんしてないものね。ベンチュラがハーフタイムに入ると、顔が笑っています。まぁ最後はこのふたりがくっついちゃうんだけどさ。そういや、あの猛烈なベッドシーンも傑作だった。一戦(三戦か……)終えた後の、ベンチュラの台詞がサイコ〜!

 それにしてもさ、ここに出てくるジム・キャリーの狂人のまねなんて、日本じゃ絶対に作れないよね。人権意識という点では日本よりはるかに進んでいるはずのアメリカで、こんな事がギャグとしてまかり通るって事は、逆に日本人の人権意識がおかしいのかもしれないぞ、な〜んて、真面目な僕は大笑いしながらも考えていたのだよ。ショーン・ヤングの正体に気がついたときのベンチュラの反応ってのもかなりすごかったけどさ、これも日本でやったらギャグとして成立する前に、一部の〈良識ある人たち〉からクレームがつけられそうだね。アメリカ映画は『フィラデルフィア』みたいな映画を一方で作りながら、その一方でこうした映画がヒットしているわけだけど、こうした分裂した感情ってのは、僕が思うにたぶんすごく健全なんだと思う。

 それにしても、今回の見どころはジム・キャリー以上にショーン・ヤングだなぁ。この女に追いかけられたら、ジェイムズ・ウッズならずとも逃げるよね。(こわいよ〜。)ベンチュラが最後にヤングを殴る蹴る、頭をつかんで柱に打ちつける、髪は引っ張る、上着は引きちぎる、スカートは引き裂くのだから、これは痛快である。それにしても、ヤングはよくこんな役を引き受けたなぁ。ヤングがどういう女か知っていて相手役を務めるキャリーも、他人ごとながら、怖いもの知らずだなぁ……。

 本編がはじまる前に同じジム・キャリー主演映画『マスク』の予告編をやっていましたが、なんでもこの作品では、あのぐるぐるよく動くキャリーの顔を、さらにSFXで変形させるというではないか。楽しみ楽しみ。


ホームページ
ホームページへ