タイムコップ

1994/09/15 パンテオン(試写会)
ジャン=クロード・ヴァン・ダム主演のSFアクション映画。
どんなに道具立てが凝っていてもやはり最後は殴り合いだ! by K. Hattori


 11月公開予定のSFアクション映画。主演はベルギー出身のアクションスター、ジャン=クロード・ヴァン・ダム。タイムマシンが発明された近未来を舞台に、時間をさかのぼって歴史に変更を加えようとする犯罪に立ち向かうタイムコップの活躍を描いています。登場人物も筋立ても至ってシンプルなのですが、タイムトラベルというややこしいテーマを脚本が練り切れていません。時間をさかのぼれば、物語は当然タイムパラドックスという難問を抱え込みますが、脚本はこの部分をヴァン・ダムのアクションでごまかしてしまいました。

 タイムトラベルを題に取った映画には『バック・トゥー・ザ・フューチャー』シリーズの他にも『ターミネーター』など数多くの作品があり、そのどれもが多かれ少なかれタイムマシンを使った歴史の変更をテーマにしています。歴史は変更できるのか、その影響はどうなる、影響をくい止めるにはどうすればいいのか。そうした仕掛けの部分にこの手の映画の面白さがあります。精密に組み立てられた歴史の流れを一度バラバラに解体し、それをもう一度組み立て直したとき、ピタリと全てのコマが収まるパズルのような快感が、このテーマにはあるのです。

 日本映画にも『時をかける少女』などがありますが、それ以上にタイムマシンがなじみの媒体といえばマンガです。日本の若い観客にとって、最も親しんできたタイムマシンは藤子不二雄のマンガ「ドラえもん」に登場するそれでしょう。このマンガは長い連載中にしばしばタイムトラベルやタイムパラドックスそのものをあつかった回があり、僕はそうしたストーリーの持つパズル的快感を思う存分味わったものです。藤子不二雄にはタイムパトロールを主人公にした別のマンガ・シリーズもありますし、映画化された『未来の想い出』も、原作はワクワクするようなセンス・オブ・ワンダーにあふれています。時間旅行はこの作者得意のテーマなのでしょう。

 「ドラえもん」で育った世代である僕にとって、この映画『タイムコップ』のトリックはあまりにも稚拙で矛盾だらけに見えます。原作はアメリカン・コミックですから、少なくともマンガ媒体においては日本のSFマンガの方がレベルが高いと言えるのかもしれません。しかし、映画メディアに多くの秀作が目白押しであるにもかかわらず、後から作った映画がトリックの部分でデタラメでは困るのです。SFはミステリー同様トリックが命。トリックに精彩を欠いたこの映画に、僕はSFである必然性を感じませんでした。あくまでもアクション映画の味付けとしてのSFなのでしょう。

 監督はピーター・ハイアムズですが、彼の映画なら前作『カウチポテト・アドベンチャー』の方がはるかに面白かった。あちらはハイテク・オカルト・コメディーでしたけどね。『タイムコップ』は、ヴァン・ダムというスター俳優をたてたわりにはお粗末な映画でした。


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