超能力者
未知への旅人

1994/06/11
広告代理店勤務のサラリーマン、タカツカヒカルの超能力人生。
実録風の企画物映画にしては芝居などがよくできている。by K. Hattori


 キワモノ映画です。でも僕、この手の映画って好きです。主人公のタカツカヒカル(高塚光)は実在の人物。ドラマ部分は三浦友和が演じますが、オープニングとエンディング、それに一部のシーンで本人が顔を見せます。高塚光氏は朝日ワンテーママガジン「オカルト徹底批判」で呉智英氏と対談をしています。僕は偶然この対談記事を読んでいたので、この映画はすごく面白かったです。ちなみに脚本が「シナリオ」誌に掲載されていて、これも読んでいました。

 広告代理店に勤めるごく普通のサラリーマン・タカツカは、重病の母を不思議な力で治癒させてしまう。その後タカツカは食堂のスプーンを曲げたり戻したり、なくなった書類を探し当てたりする力が備わったことに気がつく。タカツカが病気を治すと聞いて、続々と彼のもとを訪れる難病患者たち。やがて彼の生活は、この能力によって大きく変わって行く。

 映画はこの不思議な能力が突然身に付いてしまった主人公と、その妻の戸惑いを中心に描きます。妻を演じた原田美枝子がすごくよかった。自分が知っている夫とは違う何かに変貌してゆくタカツカを見守るしかない妻の恐れと、生活をかき回されるいらだち。そんな複雑な心の動きをきちんと演じていた。まぁこれは脚本の力でもあるけれど。患者のひとりとして丹波哲郎が登場しますが、これも短いシーンながら実に印象的でした。フランキー堺が主人公の勤める代理店の社長役で登場しますが、これはちょっとミスキャスト。ただし、このキャスティングの由来は映画の最後で説明されています。

 内容はどこまでが実話でどこからがフィクションなのかわからないところがあり、それが一種のうさん臭さを漂わせている。例えとして適当かどうかはわからないけれど、オリバー・ストーンの『JFK』に感じたのと同じうさん臭さと形容してもいいかもしれない。ただ、この映画は「超能力がある・ない」といった意味でのメッセージを発しているわけではなく、あくまでも「不思議な能力を心ならずも身につけてしまった男の葛藤」を中心に据えることでドラマとして成立している。完全なフィクションとしてみても、そこそこ面白いかもしれません。

 映画は主人公の能力を中国の気功と同じものと解釈している。主人公の病気治癒能力は、彼が患者の事故回復能力を100%発揮させることで得たものだと説明している。その解釈があっているものか間違っているものかは別として、少なくともこの映画を作ったスタッフや俳優たちが極めて真面目な気持ちでこの映画を作ったという姿勢だけは伝わってきました。この映画はキワモノ・イロモノ映画ですが、前記の呉智英氏との対談で高塚光氏自身が「僕はこの能力を色もの、キワモノと公言してはばかりません」と言っていることだし、まぁだまされたと思って思って観てみるのも悪くないかもしれませんよ。


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