幸福の条件

1993/06/10
レッドフォードとデミ・ムーアの恋の駆け引き。
ウディ・ハレルソンは相変わらず影が薄い。by K. Hattori



 とにかくレッドフォードがかっこいい。この映画はレッドフォードの映画ですね、完全に。「愛はお金で買えるのか」とか「合意の上で妻が夫以外の男と寝た場合、その後の夫婦関係は」とか、シリアスナテーマの作品なのかと思ってたんですよ、僕は。ところが途中から物語の視点はすっかりレッドフォードよりになってしまう。なるほどね。これは最初からレッドフォードのための企画だったわけだ。デミ・ムーアの視点で夫婦の問題を描くにしては、夫役のウディ・ハレルソンの影がちょっと薄いものねぇ。

 レッドフォードは『スニーカーズ』の不良オジサン役より10倍はよかったです。ブティックでチョコレートをちょろまかすデミ・ムーアににっこりと微笑みかける笑顔からして最高。その後ドレスの提供を申し出たりカジノで声をかけるシーンも実に自然です。いやらしくない。すごく無邪気ですよね。僕はレッドフォードが『ナチュラル』で、野球少年がそのまんま中年になったような男を演じていたのを思いだしました。この少年の匂いは、彼がデミの教えている教室に単身乗り込んでくるところで一気にほとばしり、屋敷で彼女に青春時代の想い出を語るところで頂点に達するのです。同じような無邪気さという点では『華麗なるギャツビー』があったけど、あの映画のレッドフォードより今回の映画の方がずっと温かみがあっていいと思います。

 映画そのものは脚本もいいとは思えないし、主人公であるデミ・ムーアやウディ・ハレルソンにも感情移入できないしで、決していいできとは言えないかも知れない。(デミ・ムーアの一番印象的なシーンって、彼女の黄色いゴム手袋だったりする。)でも僕は今後もずっと、この映画のレッドフォードを忘れられないでしょう。



ホームページ
ホームページへ