キック・アス

ジャスティス・フォーエバー

2013/12/26 東宝東和試写室
ヒット作『キック・アス』の続編は仮面のヒーローが増殖。
ヒット・ガールの学園ドラマも見どころ。by K. Hattori

13122601  キック・アスとヒット・ガールの活躍で、フランク・ダミコの犯罪組織が壊滅してから3年。デイヴはキック・アスを引退して普通の学園生活を送っていたが、全米には彼の活動に触発されて多くの素人ヒーローたちが誕生していた。「やはり僕もヒーローに戻るべきだ!」と考えたデイヴは、スターズ・アンド・ストライプス大佐が率いるヒーロー軍団ジャスティス・フォーエバーに参加。だがヒット・ガールことミンディは「普通の女の子になれ」という亡き父の親友マーカスの言いつけに従い、学園生活に馴染む努力をしはじめるのだった。同じ頃、キック・アスに父を殺されたクリス(元レッド・ミスト)は復讐を誓ってマザー・ファッカーと名乗るヴィランに変貌。豊富な資金力にものを言わせて悪の軍団を組織し、ジャスティス・フォーエバーのメンバーたちを次々に血祭りに上げていくのだった。警察は事態の収拾を図るため、素人ヒーローの活動を規制するのだが……。

 2010年のヒット作『キック・アス』の続編で、主演のアーロン=テイラー・ジョンソンやクロエ・グレース・モレッツは前作と同じだが、監督はマシュー・ヴォーンからジェフ・ワドロウにバトンタッチ。人気作品の続編は前作でウケた要素の骨組みを残し、そこに新しい物語の肉付けをしていくところに苦労があるが、今回の映画は高校生たちがアメコミヒーローっぽい扮装をして悪と戦うという物語の基本線と、素人ヒーローが本格的な悪と戦う羽目になってしまうという物語の構図を流用。その上で、前作ではキック・アスが受け持った学園青春ドラマの要素をヒット・ガールに引き継がせ、ニコラス・ケイジが演じたビッグ・ダディの穴にジム・キャリーをはめ込んだ。マザー・ファッカー(元レッド・ミスト)の周囲を補強するためジョン・レグイザモを出演させるのは上手いし、彼を劇的に退場させるくだりは鮮やかなものだ。

 前作は成り行きで現実のヒーローになった少年が、完全武装で本気の悪党退治を目指す変人親子の戦いに巻き込まれる点に意外性があった。その上でビッグ・ダディとヒット・ガールが持ち合わせていた「狂気」と、そこにまで人を追い込み、駆り立てる途方もない「悲しみ」が前作の魅力になっていたのだ。だが今回の映画にはそうした「狂気の悲しみ」が希薄だ。本作の中でもミンディが「わたしはヒット・ガールよ!」と名乗りを上げる場面はぞくぞくするような名場面だが、それはこの台詞の中に、普通を捨てて狂気の中で生きるしかないヒット・ガールの悲しい宿命が凝縮されているからなのだ。しかしその悲しみを、キック・アスは彼女と共に担うことができない。

 面白い映画だったし、さらなる続編も作られると思う。僕もこの後のキック・アスやヒット・ガールの様子を知りたい。だが本作にしろ今後作られるかもしれない続編にしろ、1作目が持っていた「狂気の悲しみ」を取り戻すことはできないと思う。

(原題:Kick-Ass 2)

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2014年2月22日(土)公開予定 新宿ピカデリーほか全国ロードショー
配給:東宝東和
2013年|1時間43分|アメリカ、イギリス|カラー|2.35:1|ドルビーデジタル、SDDS、DTS、Datasat
関連ホームページ:http://kick-ass-movie.jp/
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
サントラCD:Kick-Ass 2
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