ファイア by ルブタン

2013/11/25 松竹試写室
クリスチャン・ルブタンが演出したクレイジー・ホースのショウ。
3D画面の中で美しい美女たちが踊る。by K. Hattori

13112502  芸術的なヌードショーを売りにしたパリの老舗ナイトクラブ「クレイジー・ホース」で、2012年3月5日から5月31日まで上演されたショウ「ファイア」を3D映画として再現した作品。このショウの演出を担当したのは、フランス出身の世界的なシューズ・デザイナー、クリスチャン・ルブタンだった。映画にはルブタン本人が出演してインタビューに答え、自分とナイトクラブの関係や、ナイトクラブのショウのどこに魅力を感じるか、ショウの魅力、今回の演目の狙いなどについて語り、解説している。

 そんなわけで、この映画は単にショウの映画的な再現というわけではない。3Dカメラで上演中の舞台を単に撮影するのではなく、この映画用にショウを撮影して再構成しているようだ。クレイジーホースについてはこれまでにも、創設者のアラン・ベルナルダン自身の手による『クレイジーホース IN Paris』(1976)や、フレデリック・ワイズマンの『クレイジーホース・パリ 夜の宝石たち』(2011)などのドキュメンタリー映画が作られている。しかし舞台の裏側をたっぷり見せるこれらの映画に対して、今回の『ファイア by ルブタン』にはそうした舞台裏紹介がない。ルブタンのインタビューや、スノードーム風の映像にダンサーのインタビューがオーバーラップされるような演出はあるが、全体としてはショウの演目をそのままストレートに見せようとする姿勢だ。

 監督は2010年にFIFAワールドカップの3D生中継を監督監修したブルノ・ユランで、映画作品はこれが初めてのようだ。撮影クルーはヴィム・ヴェンダース監督の『Pina/ピナ・パウシュ 踊り続けるいのち』で撮影を担当したチームだという。

 映画に紹介されているショウを一言で表現するなら、シルク・ドゥ・ソレイユのヌード版だと思う。ストーリー性を持った演目が次々演じられて観る者の目を奪う様子は、シルク・ドゥ・ソレイユのショウを再構成したドキュメンタリー映画『シルク・ドゥ・ソレイユ 彼方からの物語』を観た時に受けた印象に近い。ストーリーはパントマイムで演じられるので、観た人によって解釈はまちまちだろう。ただし演じられるダンスは男性のいない女性だけの世界であり、その分だけダンサーたちにも高度な表現力が求められるのかもしれない。

 次から次にきれいな女性が出てきて裸で踊ってくれるのだが、残念ながら映画作品としては面白味に欠ける。「美人は3日で飽きる」と言うが、僕はこの映画に登場する美女たちに最初の30分で飽きてしまった。確かにダンスは一流だ。ダンサーも素晴らしい美女揃いだ。ボディも完璧だろう。でもここには映像としてのスペクタクルがない。映画としての面白さがないのだ。面白かったのは、スノーボールの中に閉じ込められたソロダンサーたちの映像。他の場面にも同じような映像としての工夫が欲しかった。

(原題:Feu: Crazy Horse Paris)

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12月21日(土)公開予定 ヒューマントラストシネマ有楽町、Bunkamuraル・シネマ
配給:ギャガ
2012年|1時間21分|フランス|カラー|ヴィスタ|5.1chデジタル
関連ホームページ:http://fire.gaga.ne.jp/
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
関連DVD:クレイジーホース・パリ 夜の宝石たち
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