ザ・イースト

2013/11/08 20世紀フォックス試写室
札付きの環境テロ組織に潜入した調査員が見た真実とは。
主演のブリット・マーリングに注目。by K. Hattori

13110802  民間の警備会社ヒラー・ブルードは、多くの大手企業を顧客にして業績を伸ばしている。脅迫やテロなど企業にとって秘密裏に解決したい事件を扱っているため、会社の名前が表に出ることはあまりない。だが世界中に多くの調査員を派遣して、クライアント企業からは絶大な信頼を得ている。元FBI捜査官のジェーンは難関をかいくぐって、その会社に転職。最初に得た仕事は、企業相手にたびたびテロを行っている環境保護グループ、ザ・イーストへの潜入調査だった。サラという偽名を名乗って、幸運にもグループへの接触と潜入に成功した彼女は、個性的なメンバーたちに魅了され、彼らの行動と主張に少しずつ感化されて行くのだった……。

 ジェーン(サラ)を演じたブリット・マーリングが、脚本・製作も兼ねた社会派のサスペンス映画。監督のザル・バトマングリはこれが長編映画2作目だが、1作目の映画もマーリングの出演・共同脚本・製作だったという。出演者は他に、エレン・ペイジ、アレキサンダー・スカルスガイド、ジュリア・オーモンド、パトリシア・クラークソンなど。スカルスガイドはカリスマ性と弱さを兼ね備えたグループのリーダー、ベンジーを好演している。クラークソンはいかにもやり手の会社経営者、やり手であるがゆえに性格の悪そうな女を演じている。彼女がいるからこそ、その部下である主人公が、潜入先の仲間を裏切っているにも関わらず正義の味方に見えるのだ。

 「環境保護のためにはテロもやむなし!」という過激なグループは実在している。僕は一昨年の東京国際映画祭で『もしも僕らが木を失ったら』というドキュメンタリーを観たが、それがまさに過激な環境テロリズム組織のメンバーを取材した作品だった。現在世界は強欲な資本主義に搾取されている。資本の論理で他者の権利を奪い、ごく一部の資本家たちがそれ以外の普通の人たちの生命と財産を貪っているのだ。こうした認識が、2011年の「ウォール街を占拠せよ」運動などにつながっている。かつては一部の悪徳企業が、社会的な弱者を食い物にする汚い商売をしていた。だが今はどうだ。世界的に名の知られている有名企業が、世界の99%を占める普通の人たちから富を搾り取ろうとしている。映画に登場するテロ組織ザ・イーストは、それに対して非合法な手段で警鐘を鳴らそうとする。やられたらやり返せ。目には目を、歯には歯を。だが決して「倍返しだ!」とはならない。ザ・イーストの活動にはどこかユーモアがある。

 話そのものはよくある潜入捜査もののバリエーションだが、主人公が自分の任務と潜入先の仲間との友情との間で引き裂かれていくという定番の葛藤が弱い。警察官が犯罪組織に潜り込むならそうした葛藤もあるだろうが、この映画の場合は主人公の仕事が民間警備会社だから社会的な正義に結びつかない。このあたりはもう少し工夫があってよかったかもしれない。

(原題:The East)

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2014年1月31日公開予定 シネマカリテ新宿ほか
配給:20世紀フォックス 宣伝:メゾン、スターキャスト・ジャパン
2013年|1時間56分|アメリカ|カラー|シネスコ|ドルビー
関連ホームページ:https://www.facebook.com/FoxSearchlightJP
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