劇場版タイムスクープハンター

安土城 最後の1日

2013/08/08 GAGA試写室
NHKで放送している歴史ドキュメンタリー番組の劇場版。
テレビ版とは少し雰囲気が違う。by K. Hattori

13080801  NHKで放送されている歴史ドキュメンタリー番組「タイムスクープハンター」の劇場版。ドキュメンタリーには「再現」という技法があるのだが、「タイムスクープハンター」はそれを駆使して、遠い過去に生きた一般庶民の生活を事細かに映像化していく。主人公のタイムスクープハンターがタイムマシンを使って過去におもむき、そこで出会った人々を取材するという設定だ。取り上げられるのは、歴史の教科書には出てこない庶民であることが多い。今回は劇場版ということでドラマがスケールアップし、本能寺の変で信長が殺された後の安土城焼失をスクープするのだが、物語はその真相追究が目的ではない。本能寺の変という歴史的大事件に出会った時、名もない百姓たちが、侍たちが、偶然事件に巻き込まれた商人が、どのように振る舞ったかがテーマになっている。

 今回の映画に関しては、テレビ版のスタッフや熱心な視聴者に対するご褒美やサービスという面が強いのではないだろうか。なまじ豪華キャストにしたばかりに、テレビ版で培った作品の良さが潰されてしまったように感じる。タイムスクープ社の社員が増えて、顔ぶれが豪華になるのは構わない。要潤と杏のほかに、今回は夏帆、竹山隆範(カンニング竹山)、宇津井健などがタイムスクープ社の社員として顔を出しているが、これにはそれほど違和感を感じないのだ。だが取材先で登場する相手が、上島竜兵であったり、時任三郎であったり、小島聖であったり、嶋田久作であったりすると、もうそれで違和感が出てきてしまう。出演者が立派すぎて、無名の一般庶民という感じが出てこないのだ。このあたりはテレビ版と同じように、演技に実力はあっても映像作品では無名の人たちを探してキャスティングした方が、「タイムスクープハンター」という作品の一貫性が維持できたと思う。

 今回はテレビ版に比べて長尺のドラマを成立させるため、物語の中に謎解きミステリーやサスペンスアクションの要素を取り入れている。本能寺の変から命からがら脱出した博多の豪商・島井宗叱(この人は実在の人物。宗室とも)は、タイムスクープハンターたちの目の前で何者かに襲撃され、有名な茶器・楢柴肩衝を紛失してしまう。この茶器が宗叱の手で博多に運ばれなければ、歴史の歯車が狂ってしまう。タイムスクープハンターは歴史を修復するため、楢柴を探してさまざまな時代にジャンプする。ツッパリたちがたむろする1980年代や、戦時中の1940年代など、テレビ版では紹介されなかった近現代が登場するのが面白い。いずれこれらの時代についても、テレビで詳しく取り上げてほしいほどだ。

 映画で一番の見どころは、安土城天守閣の再現とその炎上シーン。これがかなりリアルにできている。この技術があれば、黒澤明は『乱』で何億円もかけて城のセットを作らずに済んだのになぁ……。ま、あれはあれで素晴らしいのだが。

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8月31日公開予定 新宿ピカデリーほか全国ロードショー
配給:ギャガ
2013年|1時間42分|日本|カラー|サイズ|サウンド
関連ホームページ:http://timescoop.jp
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