アンコール!!

2013/04/24 アスミック・エース試写室
テレンス・スタンプとヴァネッサ・レッドグレイヴ主演の音楽映画。
老人コーラスグループと夫婦愛の物語。by K. Hattori

13042402  小さな町の小さな老人コーラスクラブの話で、映画の規模も小さなもの。しかし主演はテレンス・スタンプ。その妻の役にヴァネッサ・レッドグレイヴ。息子がクリストファー・エクルストンで、他の共演者としてはジェマ・アータートン。どう見てもお金をたっぷりかけた映画には思えないが、出演俳優の顔ぶれがしっかりしているので鑑賞後にはそれなりの充実感がある。音楽たっぷりの軽い映画でありながら、老いと死、新しい人生の模索、家族の確執と和解など、シリアスなテーマも織り込まれている。こういう映画を日本でリメイクするなら、主演は誰がいいだろう。共演者は誰がいいだろう。そんなことを考えるのが楽しくなる映画だ。

 テレンス・スタンプ演じた主人公は、高倉健でどうだろうか。高倉健は歌手として何枚もレコードを出している。大丈夫、歌える。だがそれ以上に歌う場面が多いのは、ヴァネッサ・レッドグレイヴ演じる妻だった。健さんが主役なら、この役どころは倍賞千恵子だろうか。彼女も歌手だ。『アンコール!!』はイギリス映画なので使われていたのは英語圏の曲だったが、日本映画にするなら日本のポピュラーソングにするのがいいだろう。健さんや倍賞さんの参加する老人コーラスグループが、昭和歌謡からJポップまで歌いまくる映画なんて、ちょっと観てみたいじゃないか。日本の映画プロデューサーは大まじめに、この映画のリメイク権を獲得すべきだと思う。ただし主演には必ず、テレンス・スタンプやヴァネッサ・レッドグレイヴに匹敵する大スターを据えることだ。高倉健がだめなら、渡哲也や小林旭でもいいかもな。

 主人公のアーサーは妻マリオンと二人暮らし。マリオンの趣味は老人コーラスグループで歌うことだが、アーサーはそれをバカバカしく思って、送り迎えをする際にも苦虫を噛み潰したような顔をしている。だがある日マリオンが倒れ、医者からガン再発と余命がごく短いことを告げられた。それでも最後までコーラスを続けようとするマリオンにアーサーはいら立ち、グループのコンサートで妻が自分のために歌っても嬉しい顔をすることができない。妻の気持ちがわからないわけでも、その気持ちをありがたく思わないわけでもないのだが、妻がそこまで無理をして命を縮めていくことが耐がたいのだ。自分のへそ曲がりな性格が、妻の幸せを奪ってきたのではないかという罪悪感もある。だがそんなアーサーの思いをよそに、マリオンの体調はさらに悪化していくのだった……。

 コーラスグループを主役にした音楽映画なので、実際の合唱シーンが悪ければ映画自体が台無し。しかしこの映画はその点でも満足できる内容だ。老人たちに「レッツ・トーク・アバウト・セックス」を歌わせるというアイデアも面白いし、ヴァネッサ・レッドグレイヴが歌う「トゥルー・カラーズ」もいい。だが圧巻はやはりテレンス・スタンプが情感たっぷりに歌い上げる最後の曲だろう。

(原題:Song for Marion)

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6月28日公開予定 TOHOシネマズシャンテ
7月5日公開予定 全国ロードショー
配給:アスミック・エース パブリシティ:アルシネテラン
2012年|1時間34分|イギリス|カラー|スコープサイズ|ドルビーデジタル
関連ホームページ:http://encore.asmik-ace.co.jp
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
サントラCD:Song for Marion
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