ダイナソー・プロジェクト

2013/01/16 シネマート六本木(スクリーン3)
アフリカで発見された謎の生物は太古に滅んだ恐竜なのか。
あまりデキの良くないモキュメンタリー。by K. Hattori

Dainasoproject  アフリカのコンゴで相次いで目撃された謎の巨大生物。英国未確認生物学会は現地にジョナサン・マーチャントを隊長とする調査団を派遣したが、彼らとテレビクルーを乗せたヘリコプターは行方不明となり、記録した映像素材を収録したハードディスクだけが回収された。この映画は回収された映像をもとにしたドキュメンタリー映画である……。

 『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』や『パラノーマル・アクティビティ』、『REC』などに通じる、ビデオ撮影による疑似ドキュメンタリー映画(モキュメンタリー、フェイクドキュメンタリー)。CGで作った恐竜をたっぷり見せるのが目的で、ドラマ部分はあまりにもおざなり。それを補うためのドキュメンタリー仕立てなのだろうが、ドキュメンタリーに仕立てるなら仕立てるで、それなりの構成や脚本や演出というものがあるべきだろう。

 映画は作り手と観客が映画ならではの約束事を踏まえた上で、そこにある虚構に双方が目をつぶるという共犯関係によって成り立っている。しかしこの時、作り手はなるべく虚構が虚構であることを隠す努力をするし、観客はその努力に免じて、映画に多少の不手際があっても見て見ぬ振りをするのだ。こうした関係が破綻するのは、映画の作り手があるべき約束事を無視して、観客にむき出しの虚構を突きつけてしまう時だ。この『ダイナソー・プロジェクト』には、そうした場面が随所にある。

 例えばこの映画は、回収された映像データのみで作られているという約束事がある。しかし映画はそれを、最初から無視してしまうのだ。川に浮かぶバックパックを回収する男たちと、その中から見つかった映像データの入った機材。これはどう考えても、回収されたデータの中には入りようのない映像だろう。これは映画の最後にも同じようなものが出てくる。バックパックの中にデータを入れて、それを流す場面が出てくるのだ。この映像はどのように撮影して、その撮影データはどうやって回収したんだろうか?

 劇中の映像はテレビクルーのカメラと、隊長の息子が持ち込んだ複数台の小型ビデオカメラ(GoProだろう)を使用して撮影したことになっている。ところがこの小型ビデオカメラ、バッテリーは永久になくならないし、無線を使ってタブレット端末に撮影画像を飛ばせるなど、とんでもなくハイスペックなのだ。映像は全部で100時間分録画されているという設定なのだが、それだけのバッテリーがどこにあるのかがまったく不明。こうした問題は昔なら誰も気にしなかったのだが、携帯端末やデジタルカメラが日曜的に使われている時代には、誰もが気づいてしまう問題点なのだ。でもこれを解消するのは簡単。登場人物に「バッテリーはまだ大丈夫か?」「今のところ問題ない」と言わせればいいだけなのだ。

 映画の虚構がリアルに見えるかウソになるかは、細部の工夫次第でどうとでもなるものなのだ。

(原題:The Dinosaur Project)

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3月16日公開予定 シネクイントほか全国ロードショー
配給:シンカ 宣伝:グアパ・グアポ
2012年|1時間23分|イギリス|カラー|スコープサイズ|デジタル
関連ホームページ:http://dinosaurproject.jp
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
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