ジャッジ・ドレッド

2013/01/09 東映第1試写室
情け容赦なく悪を裁く未来の司法官ジャッジ・ドレッド。
カール・アーバンのへの字口にしびれる。by K. Hattori

Dredd  1977年にイギリスのコミック雑誌に登場した「ジャッジ・ドレッド」は、海外ではさまざまなメディアや他のキャラクターとコラボレーションしている人気キャラクター。1995年にはファン待望のハリウッド映画化が実現し、シルヴェスター・スタローン主演でシリーズ化することが想定されていた。しかし蓋を開けてみれば1作目からいきなり不評で興行的にも惨敗し、続編製作の話も破算。その後も何度か続編製作の話題が出ては消え、今回ようやくリブート作品として復活することになった。前回の映画には文句たらたらだった原作者も、今回の映画には太鼓判を押しているとのこと。主演のカール・アーバンは原作の愛読者で、主人公のドレッドがヘルメットを決して脱がない、つまり役者として出演しても決して顔がスクリーンに出ることがないという条件を喜んで承諾したとのこと。喉の奥から押し出すように話す台詞や、喋らないときは口もとをへの字に結んで内面の感情が決して表に出さないことで、謎めいたカリスマ性のあるヒーローを好演している。

 核戦争後の地球。生き残ったわずか8億人の人類は、かつてアメリカと呼ばれた廃墟の中に超高層ビルを建設して暮らしていたが、そこは人口が超密集するスラムだ。その世界で社会の治安を守るのは、警察権と司法権を兼ね備えたジャッジたち。重武装した彼らは町の中で犯罪を見つけると、罪の大きさに応じて即座に判決を下し、場合によっては犯人を処刑する。こういう制度下では小さな犯罪は減るが、裁かれることを恐れない悪党たちはより凶悪化していく。虐げられる無辜の市民と、その上に君臨する悪党たち。ピーチツリーと呼ばれる200階建ての巨大ビルを治外法権のように事実上支配しているのは、仲間たちから「ママ」と呼ばれる女だった。彼女はジャッジ・ドレッドとその相棒をビルに閉じ込め、部下たち総掛かりで抹殺しようとするのだが……。

 正義の主人公が悪党たちが牛耳る建物に閉じ込められ、大勢の敵からの攻撃をかわしながら建物内を逃げ回り、やがて反撃に転じて敵を倒し最後は脱出する。これは少し前に観たインドネシア映画『ザ・レイド』とそっくりなのだが、源流をたどれば『ジョン・カーペンターの要塞警察』や、そのルーツである西部劇『リオ・ブラボー』などにたどり着くものなのだろう。要するにアクション映画のひとつの典型だ。こういう型にはまってしまった物語は、多少の無茶をやっても骨組みがびくともしない。主人公がたちが建物に閉じ込められてから外に出るまでは、まさに息つく暇のないノンストップアクション。暴力描写も激しく、日本でのレイティングはR15+。劇場だとそれが3Dで観られるのだ。(試写は2Dだったのが残念。)

 ママを演じたレナ・ヘディがすごい貫禄。『ジャングル・ブック』(1994)の頃から知ってるから、その変貌ぶりには驚くばかりだ。

(原題:Dredd)

Tweet
2月16日公開予定 渋谷TOEI、新宿ミラノ
配給:ブロードメディア・スタジオ
2012年|1時間35分|イギリス、南アフリカ|カラー|シネマスコープ|ドルビーデジタル
関連ホームページ:http://www.judge-dredd.jp
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
輸入DVD:Dredd
サントラCD:Dredd
原作コミック:Judge Dredd (John Wagner)
ホームページ
ホームページへ