SUSHi GiRL

スシガール

2012/11/27 シネマート六本木(スクリーン3)
仲間の出所祝いに駆けつけた強盗仲間たちによる凄惨な拷問。
面白い映画だがもう少し荒々しさが欲しい。by K. Hattori

Sushigirl  ダイヤ強盗事件の犯人として、刑務所の中で6年間もくさい飯を食ってきたフィッシュ。だが刑期を終えたとき彼を待つ家族はもはやおらず、出迎えたのは昔の強盗仲間たちだった。改装中のレストランで、全裸の美女の上に寿司や刺身を並べて開かれる風変わりな出所祝いパーティ。だが全員の関心は目の前の料理でも美女でもなく、フィッシュが逮捕される前に消えたダイヤの行方だ。ダイヤが警察に押収された形跡はない。だとすればフィッシュがどこかに隠したのだ。男たちはフィッシュを縛り上げると、ダイヤのありかを吐かせるために手荒な拷問をはじめるのだった。

 閉鎖された空間に悪党たちを放り込み、ギリギリの状況に追い込んで殺し合いをさせるという映画。物語の前半は出所したばかりのフィッシュの視点で進行し、その合間に過去の強盗のいきさつなどをフラッシュバック形式で挿入していく構成だ。物語の主人公は出所したばかりのフィッシュ。彼は強盗犯の一員ではあったが、ひとりだけ逮捕されて社会的な償いを済ませているし、服役中に妻が別の男と一緒になったことで幼い息子も含めて愛する家族全員を失っている。自業自得ではあるが、映画を観る者はフィッシュに同情する。彼に共感はできないまでも、過去を悔いて傷ついている彼に観客は同情している。だからこそ、その後に彼がひどく拷問されることにショックを受けるのだが、主人公フィッシュをこの状況からどう脱出させるかに、この映画の最大の仕掛けがあったように思う。ただしこれはズルイと思うけど……。

 基本的にはレストランのセット内部のみで物語が進行し、あとはダイヤ強奪や逃走時のエピソードが少し挿入されるだけ。見るからに低予算映画だ。しかし配役には個性的な面構えのベテランが並んでいて、あまりチープな感じはしない。映画の冒頭とラストに登場する千葉真一。強盗グループのリーダーを演じるトニー・トッド。『スター・ウォーズ』のマーク・ハミル。マイケル・ビーンやダニー・トレホはゲストみたいなものだが、こういう顔つきの俳優が出てくると、それと対峙する強盗団のメンバーも引き立ってくる。脚本・監督のカーン・サクストンはこれが長編デビュー作だというが、与えられた条件の中で手堅くきっちり面白い映画を作り上げている。

 拷問シーンに身の毛がよだつ思いがするという以外は、とりたてて大きな不満のない映画だ。しかし大きな不満がない代わりに、大きな魅力も感じられなかった。そこそこ面白く観られるが、突出した面白さがないのだ。全体がバランスよく、手堅く、きちんとまとまっているものの、そのバランスを壊してしまいかねないダイナミックさやエネルギッシュさは感じられない。暴力的な映画ではあるのだが、作り手の映画作りの姿勢に暴力的な荒々しさがない。中途半端に「おりこうな映画」になっている。こういう映画はもっと徹底的にバカにならねば!

(原題:Sushi Girl)

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12月22日公開予定 銀座シネパトス
配給:アース・スター エンタテイメント 配給・宣伝協力:エプコット
2012年|1時間38分|アメリカ|カラー|シネスコ|ドルビーデジタル
関連ホームページ:http://www.sushi-girl.net
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
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