デッド寿司

DEAD SUSHI

2012/11/26 シネマート六本木(スクリーン3)
山奥の温泉ホテルで無数のにぎり寿司が人間を襲う!
井口昇監督作。主演は武田梨奈。by K. Hattori

Dead_sushi  物心つく前から、天才寿司職人の父に寿司の奥義を叩き込まれてきたケイコ。「寿司の道は武の道に通ず」が信条の父は徹底的に寿司と武道の稽古を強いるが、彼女はそれに反発してついに家を飛び出し、山奥の温泉ホテルで仲居として働くようになる。だがその生活は、ホテルに社員旅行の団体客が訪れたことで一変する。旅行グループに恨みを持つ男が、蘇生薬で寿司をゾンビに変えてしまったのだ。新たな命を与えられた寿司たちは、大軍となって人間たちに襲いかかりはじめる。ケイコは客や他の従業員たちを守るため、元寿司職人の澤田と共にゾンビ寿司に立ち向かうのだった。

 異能の映画監督・井口昇の最新作。どう見ても低予算のB級路線映画だが、出演者の顔ぶれは結構充実していて、ドラマ部分で馬鹿をやっていても、その馬鹿馬鹿しさが薄っぺらにならないのがスゴイ。主演の武田梨奈はまだタレントとして芽が出はじめたところぐらいのレベルだが、彼女をサポートする元寿司職人に松崎しげる、ホテルの怪しい板長に津田寛治、ホテルの社長に仁科貴、怪しい団体客には手塚とおるや須賀貴匡。他にも井口監督作品常連の島津健太郎、亜紗美、村田唯などが、テンションの高い芝居で物語をぶんぶん振り回していく。こうした人間描写の面白さに比べると、モンスターがにぎり寿司のみというのがやや弱いような気もする。最初に登場したイカ寿司のパワフルさに匹敵するものが、映画中盤以降になかなか見当たらないのだ。巻物やいなり寿司、チラシ寿司、海鮮丼や鉄火丼、ワサビやガリなどの脇役たちも含め、アイデアはまだまだ膨らんでいくような気がするんだけどな……。

 マーシャルアーツ系の映画は主役にからむ相手方のリアクションで迫力が違ってくるのだが、この映画ではその点で見劣りするのが残念。初主演映画の『ハイキック・ガール』は実際にパンチやキックを相手に当てていたのでタイミングのいいリアクションも可能なのだが、この映画は当てるふりがほとんどで、宴会場での大乱闘などはショッピングモールの「仮面ライダーショー」なみに相手との距離感がある。まあこの映画自体はアクションそのものが売りではないし、アクションに力を入れると必要以上にお金がかかってコストパフォーマンスの悪い映画になってしまうのだろう。しかしせめてラスボスとの対決ぐらいは、もう少し何とかならなかったのかな。武田梨奈のアクションだけが空回りしていて、それがちょっと気の毒に見えてしまった。まあそれはそれで、一生懸命さがにじみ出ていていいんだけれど、浴衣の帯を使ったアクションなどは、帯だけがヒラヒラ舞ってしまって見るに堪えない。これは一度帯を濡らしておけばいいんだけど、最近の宴席には杯洗なんてないものな。でもにぎり寿司の実演があるんだから、近くに生け簀を置いておくとかすればいいんだけどね。

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1月19日公開予定 新宿武蔵野館(レイトロードショー)
配給:ウォーカーピクチャーズ 配給協力:アークエンタテインメント
2012年|1時間32分|日本|カラー|HD
関連ホームページ:http://deadsushi.com
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