ロック・オブ・エイジズ

2012/09/25 TOHOシネマズ錦糸町(スクリーン3)
ブロードウェイでヒットしたロック・ミュージックの映画版。
ところどころで困ったシーンが……。by K. Hattori

Rockofages  2006年にロサンゼルスで初演され、2009年からはブロードウェイでの上演も行われているロック・ミュージカル「ロック・オブ・エイジズ」の映画版だ。この作品は2009年のトニー賞で5部門にノミネートされた話題作で、昨年には日本でも西川貴教や島谷ひとみ主演で翻訳上演が行われている。1980年代のロック・ミュージックを大々的に取り入れたジュークボックス・ミュージカルで、1980年代の洋楽ブームをリアルタイムで知っている僕には懐かしい世界だ。

 1987年のロサンゼルス。老舗のライブハウス「バーボンルーム」で働きながらロックスターを目指す青年ドリューと、歌手を夢見る新人ウェイトレスのシェリーが恋に落ちる。だが店で大物ロック歌手ステイシーのライブが行われた日、楽屋を出入りするシェリーとステイシーの様子にただならぬものを感じたドリューは、ステイシーのマネージャーであるポールに誘われるまま店を飛び出してメジャーデビューすることに。だがドリューはロック歌手ではなく、髪を短く切り揃えて少年アイドルグループの一員にさせられてしまう。一方で傷心のシェリーも店を飛び出し、ストリップバーの踊り子として生活し始める。流されてゆく若いふたり。同じ頃ふたりがいなくなったバーボンルームは、保守的な市民による地域浄化作戦のターゲットとされ、開店以来の存亡の危機にさらされていた……。

 物語としてはボーイ・ミーツ・ガールのありふれたもので、そこに1980年代の音楽と風俗描写がてんこ盛りになっているというのが見どころだろうか。問題はリアルに(?)再現された1980年代がまったく魅力的ではないことや、主人公のドリューとシェリーを演じる若い俳優(ディエゴ・ボネータとジュリアン・ハフ)が冴えないこと。スターを夢見ながら挫折する若者という「冴えない役」であることも事実だが、それ以前の問題として、ふたりとも締まりのないプヨプヨした体型と顔立ちなのが恥ずかしい。レコード店でふたりが歌い踊る場面など、あまりの気恥ずかしさにスクリーンから目を背けてうつむいてしまいそうになった。映画会社がステイシー役のトム・クルーズにフォーカスを当てた宣伝をしていることも、この映画の主人公に魅力がないことの表れだろう。

 監督はミュージカル映画『ヘアスプレー』を手掛けたアダム・シャンクマンだが、今回の映画の1980年代は、『ヘアスプレー』で描かれた1960年代ほど魅力的ではない。楽曲の多いミュージカル映画だから、普通は1曲か2曲「これはスゴイ!」というナンバーがあってしかるべきなのだろうが、この映画では逆に「これは勘弁してくれ」と逃げ出したくなるようなナンバーがいくつかある。例えばキャサリン・ゼタ=ジョーンズや、アレック・ボールドウィンが歌い踊るナンバーなどは、映画を観ながら目のやり場に困ってしまった。

(原題:Rock of Ages)

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9月21日公開 丸の内ピカデリーほか全国ロードショー
配給:ワーナー・ブラザース映画
2012年|2時間3分|アメリカ|カラー|シネマスコープ|ドルビーデジタル
関連ホームページ:http://wwws.warnerbros.co.jp/rockofages/
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
サントラCD:ロック・オブ・エイジズ
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