アウトレイジ

ビヨンド

2012/09/07 ワーナー試写室
暴力団内の飽くなき権力抗争を描くバイオレンス映画。
これは現代版『仁義なき戦い』だ。by K. Hattori

Outrage2  2010年6月に公開されて話題となった、北野武監督のやくざ映画『アウトレイジ』の続編。前作公開から間もない2010年9月に続編製作が発表され、2011年秋公開が予定されていたが、3月11日の東日本大震災の影響で丸1年の延期となった。映画は製作が本決まりになっていても、何かの拍子につまずくとそのまま製作中止になってしまうことがある。この映画については、当初の予定から遅れながらも続編が無事製作されたことが何より。また今回は出演者の顔ぶれも前作以上に豪華で、登場シーンがごく短いチンピラのような役にも、有名な俳優が出てくるという贅沢さだ。

 関東最大の暴力団組織山王会は、新会長の加藤(三浦友和)に代替わりしてから5年で、政財官の世界にまで影響を与える巨大な権力を握るようになった。その山王会で会長の右腕として若頭を務めるのが、かつて大友組で金庫番をしていた石原(加瀬亮)。彼は山王会に追い詰められた大友組を裏切ることで加藤にすり寄り、今の地位を手に入れていたのだ。しかし加藤たちの急激な組織近代化を、古参の幹部たちは快く思っていなかった。かねてより山王会に出入りしていたマル暴の刑事片岡(小日向文世)は、山王会の現状に不満を持つ古参幹部の富田(中尾彬)をたき付け、西日本で最大の暴力団組織花菱会と接触させる。大友(ビートたけし)が刑務所を出てきたのは、そんな時だった。かつての忠実な子分たちを全員失い、ヤクザから足を洗おうとも考えている大友。だがかつての敵でありながら、今は彼を慕う木村(中野英雄)の存在もあり、再び山王会の権力抗争の中に巻き込まれていく。

 今回の映画は物語の作りとしては、かなり古風な任侠ヤクザ映画のパターンをなぞっていると思う。かつて事件を起こして刑務所に入った伝説のヤクザが、何年かぶりにシャバに戻ってくる。男はヤクザ家業から足を洗うことも考えているが、周囲の思惑がそうはさせてくれない。男は結局弟分の顔を立てるように、再び暴力の世界に舞い戻っていくのだ。こうした古典的な任侠ヤクザ映画の世界と、身も蓋もない権力抗争に明け暮れる東映実録ヤクザ映画の世界を組み合わせ、北野武流に咀嚼して21世紀バージョンに仕立てなおしたのが、今回の『アウトレイジ ビヨンド』なのだろう。今回の映画はそこに、主君を裏切って権力を握った男が破滅するという、シェイクスピアの「マクベス」、あるいは黒澤明の『蜘蛛巣城』のの要素が入っている。裏切り者のマクベスは自分が殺したかつての仲間の亡霊に苦しめられるのだが、仲間をを裏切って権力の頂点をつかんで若頭になった石原にとって、生きていた大友の存在はまさに目の前に現れた幽霊なのだ。

 前作『アウトレイジ』に比べても、今回の『アウトレイジ ビヨンド』はドラマの作りがガッシリしている。北野武がこういう映画を撮るようになるとはなぁ……。

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10月6日公開予定 丸の内TOEI、新宿ピカデリーほか全国ロードショー
配給:ワーナー・ブラザース映画、オフィス北野
宣伝:アルシネテラン、ノーフューチャー
2012年|1時間52分|日本|カラー|シネマスコープ|ドルビーデジタル
関連ホームページ:http://wwws.warnerbros.co.jp/outrage2/
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
サントラCD:アウトレイジ ビヨンド
前作DVD:アウトレイジ
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