表向きはストリップクラブの顔を持つ違法カジノ「ライジング・サン」。その用心棒レイは店のボスからも信頼される実直な男だが、彼がこんな店で働いているのは汚職警官として5年の刑期を勤めた過去があるからだ。自分を拾ってくれたボスのため、慣れない仕事を実直にこなしていくレイ。だがある夜レイの目の前で店は強盗に襲われ、30万ドルの大金が盗まれ、ボスの息子も殺されてしまった。ボスはレイに犯人を捕らえることを命じ、店を牛耳る犯罪組織のドンは、事件の推移を見守る監視役として殺し屋のチャーリーを送り込んでくる。レイは刑事時代の相棒から情報を聞き出し、犯行に使われた銃をたどって犯人に迫っていくのだが……。
元プロレスラーのデビッド・バウティスタ主演作だが、主人公レイが怪力無双であるわけでなし、たくましい肉体美を見せつけるわけでもない地味〜な作品になっている。この地味さは「渋い!」という味にもなるわけだが、一般にはあまりこれといった売りがない映画に見えてしまうかもしれない。主人公のレイは身体が大きくて威圧感があり、腕っ節も強ければ度胸もあり、頭だって悪いわけじゃない。しかし5年の服役生活で何もかも失ってしまったという過去が、彼を臆病にさせている。前科者の彼はもはや陽のあたる場所に出て行くことはできないだろう。しかし一生こそこそ逃げ回るような暮らしもしたくない。犯罪組織の中であろうとどこであろうと、自分に与えられた仕事をこなすことで得られる身の丈に合った自由を享受できればそれで十分……。バウティスタの少々固く見える芝居からは、そんなレイの窮屈な暮らしぶりが伝わってくる。レイは自分で自分を持てあましている。自分で自分をどうしていいかわからない。しかしそれでも、人は命がある限り生きていかなければならない。危険が身に迫ればそこから逃れることを考え、追い詰められれば追っ手に立ち向かう。その結果、事態が大きく好転するわけではないとわかっていてもだ。
映画としてはさほど予算のかかっていないB級作品だし、アクションにもサスペンスにもこれといって大きな見せ場があるわけじゃない。デビッド・バウティスタにとっても、これが当たり役やはまり役というわけではないだろう。しかし僕は、この映画の持つ後ろ暗いムードに好感を持つ。自分にとって似つかわしくない場所に放り込まれながらも、その中で何とか歯を食いしばって生きていこうとする男を応援したい気持ちになる。不本意ながらも裏社会で生きていくことを選ばねばならない男を描いているという意味で、これは『ゴッドファーザー』シリーズなどと通じる世界だと思う。
登場人物たちの中では、組織から送り込まれた殺し屋でありながら、主人公の親友のようや立場になって行くチャーリーという男の存在が光る。演じているクレイグ・フェアブラスにとって、これは儲け役だった。
(原題:House of the Rising Sun)
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