アポロ18

2012/03/22 角川映画試写室
秘かに打ち上げられたアポロ18号の乗員たちが見たものは?
疑似ドキュメンタリーとしてはイマイチ。by K. Hattori

Apollo18  1961年5月25日。アメリカ合衆国のケネディ大統領は上下両院合同議会で演説し、「今後10年以内に人間を月に着陸させ、安全に帰還させる」と宣言した。ここからアポロ計画がスタートする。それから8年後の1969年、アポロ11号は人類初の有人月着陸に成功。その後1972年打ち上げのアポロ17号まで、アメリカは6回にわたって宇宙飛行士を月に送り届けた。途中アポロ13号で事故が起こった様子は、映画『アポロ13』に描かれているし、アポロ計画の全体像についてはトム・ハンクスが製作したテレビシリーズ「人類、月に立つ」がある。アポロ計画はその開始から終了までが、アメリカ人にとって誇るべき現代の神話だ。

 最後のアポロ17号が打ち上げられてから、今年で40年。その間、人類は1度も月に行っていない。そのための技術は確立されているのに、一体なぜなのか? 予算不足によるものだとされているが、これには裏がある。じつはアポロ計画は当初の予定通り20号までが実施されているのだが、その間にとても公表できないような事態が起きていたという説がある。この映画は未公表のまま打ち上げられて、歴史の闇に葬られたアポロ18号の飛行記録をもとにしたドキュメンタリー映画。3人の乗員たちが撮影したフィルムは紛失したと考えられていたが、何らかの方法で回収されて厳重に保管された。だがつい最近、その一部がインターネットにアップロードされているのが発見された。米政府やNASAの情報隠蔽に抗議するため、何者かが貴重な映像資料をリークしたらしい。(日本で2010年に起きた尖閣諸島中国漁船衝突事件で、海上保安官が記録映像を流出させた事件を連想させる。)

 本作『アポロ18』は内容的には完全なモキュメンタリー(フェイクドキュメンタリー)だが、1970年代半ばに撮影されたという映像をそれらしく再現していて見事なもの。ただし1970年代の技術では、発射から帰還までの全行程を映像として(しかも同時録音のトラック付きで)記録し続けることはできなかったはず。防犯カメラのように定点観測映像がずっと記録され続けているというのは、大容量のHDDにデジタル画像が記録できるようになった時代の発想なのだ。そんなわけで僕はこれに、POVスタイルの作品に必要なリアリティを感じない。モキュメンタリーとして作るなら、関係者の現時点でのインタビュー、当時の記録映像(ニュースやインタビュー、ホームムービーなど)、スチル写真、音声記録などで全体の7〜8割を構成し、飛行士たちが撮影していた映像はごく少なくした方がよかったのではないだろうか。

 本作はモキュメンタリーというより、POVスタイルのホラー映画の流れで評価すべき作品なのだろう。映画は嘘を観客に信じさせる芸術だ。そのためにPOVが効果的ならそれもいいだろう。しかし1970年代にPOVはやり過ぎだと思う。

(原題:Apollo 18)

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4月14日公開予定 渋谷TOEI
配給:角川映画 宣伝:ティー・ベーシック、スキップ
2011年|1時間27分|アメリカ|カラー|ビスタサイズ|ドルビーSRD
関連ホームページ:http://apollo18.jp/
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
関連書籍:アポロ計画
関連DVD:アルマズ・プロジェクト
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