ファミリー・ツリー

2012/01/17 20世紀フォックス試写室
ハワイを舞台にした少しスローでほろ苦いコメディ映画。
主演はジョージ・クルーニー。by K. Hattori

Familytree  ハワイで弁護士をしているマット・キングは、ハワイ王朝の祖カメハメハ大王の血を引く一族の末裔。一族はカウアイ島に広大な原野を持っているのだが、新しい法律に従ってこの土地を手放さねばならない。マットは遺産の相続管理者として、目下この土地の売却先を探している最中だ。土地が売れれば手つかずの自然が残る土地が開発されて巨大なリゾート施設ができるのと引き替えに、一族の全員に莫大な現金が転がり込んでくる。だがキング家が来年にも億万長者になろうかという矢先、マットの妻エリザベスが趣味のボートレースで事故を起こし脳死状態になってしまう。家のことを妻に任せきりだったマットは、土地を売った金で妻や家族と悠々自適の生活を楽しむはずだったのに……。ふたりの娘とぎこちない生活をはじめたマットに、長女のアレックスが衝撃の告白。じつは妻のエリザベスが、マットに隠れて浮気していたというのだ。親友夫妻に事情を聞くと、妻は離婚すら考えていたというから大ごとだ。マットはこの問題に決着を付けるため、妻の浮気相手だった男に会うことを決意する。

 『アバウト・シュミット』のアレクサンダー・ペイン監督が、『サイドウェイ』以来7年振りに手掛けた長編映画。カウイ・ハート・ヘミングスの原作小説は日本では未訳だが、ハワイを舞台にしたこの作品は映画の大画面で観た方が説得力がありそう。アカデミー賞前哨戦と言われるゴールデン・グローブ賞では5部門にノミネートされて、ドラマ部門の作品賞と男優賞を獲得。アカデミー賞でも主要5部門にノミネートされて、2月26日の授賞式で発表される結果を待っている状態だ。

 それまで何の疑いもなく「平穏な日々」を送っていた主人公が、突然これまでの人生になかったようないくつもの衝撃に見舞われてオロオロするというコメディだ。この「平穏な日々」というのは、「平和な日々」という意味ではないし、ましてや「幸福な日々」という意味でもない。結局この主人公は、いつも目の前にあった大切な出来事から目を背け、見て見ぬふりをしてきただけなのだ。家のことは妻に任せきりで、娘たちとはろくに話もしてこなかった。その妻との夫婦関係が、事実上完全に破綻していたことにも気づかなかった。家の中はボロボロだったのに、主人公はそこから目をそらして何も問題はないと思い込んでいたのだ。だが妻が事故で昏睡状態になったことで、主人公は目の前の現実に向かい合わねばならなくなる。個別の問題の内容はどうであれ、この映画では主人公が本当の自分の暮らしを見つめ直していくところにドラマがあるのだと思う。

 主演のジョージ・クルーニーは堅実な芝居を見せるが、彼の思春期の娘を演じたセイリーン・ウッドリーに好印象。テレビ中心に活動していた女優のようだが、この映画をきっかけに映画に出てくるようになると思う。

(原題:The Descendants)

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4月GW公開予定 TOHOシネマズシャンテ
配給:20世紀フォックス 宣伝:メゾン
2011年|1時間55分|製作国|カラー|シネマスコープ|DTS、SDDS、ドルビーデジタル
関連ホームページ:http://movies.foxjapan.com/familytree/
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
サントラCD:The Descendants
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