TSY

タイムスリップヤンキー

2012/01/13 映画美学校試写室
不良高校生がタイムスリップした先で出会ったのは自分の両親。
主演はピースの綾部祐二。by K. Hattori

Tsy  人気お笑いコンビ、ピースの綾部祐二(ツッコミ担当の小柄なイケメン)が主演する、不良高校生版『バック・トゥ・ザ・フューチャー』。高校生の主人公がタイムスリップして、高校生時代の両親に出会うという筋立ては同じ。タイムスリップを研究している怪しい博士が出てくるところなどは、作り手の側が『バック・トゥ・ザ・フューチャー』を踏まえていることを示す観客へのサインだろう。ただしこの映画、本家とはだいぶ趣向が違う。タイムスリップするのが主人公だけでなく、たまたま出会って喧嘩をしていた若い男や、主人公の恋人、クラスメイトなど、総勢4人になっている。

 タイムスリップものでは過去の時代背景を細かく再現して時代色を出すのが常だが、この映画はそうした場面が意外なほどに少ない。主人公の父がボーリング場でテレビゲームをやっているのが、時代色と言えば時代色だろうか。しかしゲーム画面が出てこないので、ゲームの内容がわからない。このあたりは予算の少なさという部分もあるのだろうが、時代風俗を示す台詞や流行歌のひとつも流せばだいぶ違うだろうに、そうした小細工を一切していない。たぶん作り手の側には、1982年という時代に大きな意味も思い入れもないのだろう。だとすれば、時代はもっと後ろにずらした方が自然ではないだろうか。1982年の高校生は、2012年には40歳代後半だ。それで高校生の息子がいること自体は不自然ではないが、主人公の両親は高校時代からの恋人同士という設定なのだから、結婚は20代前半でいいはず。そのまま20代半ばで子供が生まれたと考える方が自然で、これだとタイムスリップする時代は1980年代の後半にした方がいい。つまり昭和から平成に変わる頃合いだ。(こうして細かな年代にこだわるのは、僕自身が同じ時期に高校生だったからだ。)

 まあそういうわけで雑なところもあるのだが、この映画にはその雑さを勢いで乗り切ってしまうパワーがなくもない。そもそもこの映画は主人公の親殺しというとんでもなくネガティブなモチーフが序盤に用意されていて(事故なのだが主人公の行為がきっかけで母親が死んでしまう)、このタブーをいかにして回避するかがストーリーの核になっていく。出された結論はひとつ。主人公が生まれなければ、母親が息子に殺されることもない。主人公は親を救うため、自分を犠牲にして両親の結婚を阻止しようとするのだ。

 これは『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の逆手をやっているわけで、新しいといえば新しいテーマだ。しかしここには古典的なタイムパラドックスが発生する。息子が自分の生まれる前に戻って両親の仲を引き裂いた場合、おそらく息子は生まれなくなる。しかしその場合、両親の仲を引き裂いた息子はどこから現れたのだろうか? 映画はこれをあっと驚くような方法で解決させて最後のオチにする。面白い。

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2月11日公開予定 全国ワーナー・マイカル・シネマズ
配給・聖伝:ジョリー・ロジャー 宣伝協力:ブラウニー
2011年|1時間29分|日本|カラー|ステレオ
関連ホームページ:http://tsy-movie.com/
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
関連DVD:バック・トゥ・ザ・フューチャー
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