ペントハウス

2012/01/10 東宝東和試写室
高級タワーマンションで働くスタッフたちが強盗に変身。
豪華キャストの犯罪コメディ。by K. Hattori

Penthouse  マンハッタンの摩天楼群の中にそそり立つ、富裕層向けの超高級分譲マンション「ザ・タワー」。ジョシュはそのマンションで働くスタッフを束ねる有能なマネージャー。居住者たちの仕事や個人情報を知り尽くし、痒いところに手が届く徹底したサービスを行うのが彼の仕事。だがそんな彼も、マンション最上階のペントハウスに住む高名な投資家アーサー・ショウが、投資詐欺容疑で逮捕されたことには驚いた。じつはスタッフの年金資金を預かっていたジョシュは、逮捕されたショウに資金運用を委託していたのだ。個人的な資産をショウに預けたスタッフもいて、タワーマンションのスタッフたちはたちまち一文無し。怒り心頭のジョシュはショウの部屋に怒鳴り込み、マネージャーの仕事をクビになってしまう。だがそんな彼に、FBI捜査官から耳寄り情報。ショウがくすねた金のうち2,000万ドルほど帳尻が合わず、どうやら彼が自分の部屋の中に隠しているらしいとのこと。騙し取られた金は、騙した相手から盗み取れ! ジョシュは共にクビになった仲間や顔見知りを集めて、ショウの部屋から大金を盗み出そうと計画し始めるのだが……。

 監督は『ラッシュアワー』シリーズのブレット・ラトナー。脚本は『オーシャンズ11』『マッチスティック・メン』のテッド・グリフィンと、『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』のジェフ・ナサンソンだから、詐欺だの泥棒だのはお手のもの。キャスティングも超豪華で、顔ぶれだけ見れば面白い映画になりそうなのだが、優れた監督、優れた脚本家、優れた俳優たちを集めても、必ずしも優れた映画ができないところが映画作りの不思議であり面白さでもある。話のアイデアは悪くないと思う。強盗計画のドタバタも悪くない。しかしこの映画、どうにもイマイチなのだ。

 個性あふれる落ちこぼれの寄せ集めメンバーが、大それたミッションを計画してまんまと成功させる物語だ。この手の映画は昔からごまんと作られているが、そこでは登場人物たちの持つ能力がパズルのように組み合わされて、全体として大きな力を発揮することになる。しかしこの『ペントハウス』では、どうやらそれが上手くいっていない。金庫破りの名人といった特殊技能の持ち主を除けば、他の全員はとりあえず集められた「人手」でしかない。だから計画の途中でメンバーが抜けたり裏切ったりしても、計画自体はそれによって大きなダメージを受けることがない。例えばマシュー・ブロデリックが演じる元マンション住民の男なんて、暗算以外にどんな能力を発揮したというのだ?

 しかしこの映画の筋立て自体は、ウォール街で大規模デモが起きる今のアメリカの気分を表したものになっていると思う。これは日々ひたいに汗して働く庶民たちがウォール街で働く金持ちに全財産をむしり取られる話であり、彼ら庶民が非合法な手段を使ってでもそれを取り戻そうとする物語だからだ。

(原題:Tower Heist)

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2月3日公開予定 TOHOシネマズ有楽座
配給:東宝東和
2011年|1時間44分|アメリカ|カラー|スコープサイズ|ドルビーSRD
関連ホームページ:http://www.
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
サントラCD:Tower Heist
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