ロサンゼルスでWEBサイトのアートディレクターをしているディランは、ヘッドハンターのジェイミーから、ニューヨークに編集部を持つ人気雑誌GQの新しいアートディレクター職を紹介される。はじめは気乗りしなかったディランだが、ニューヨーク暮らしの魅力を盛んにアピールするジェイミーの気さくな態度に好感を持ったこともあり、ニューヨークへの移住を決意。知り合いのいないニューヨークの一人暮らしで、ディランにとって最初の友人がジェイミーだった。少し前にこっぴどい失恋をしていたふたりは、どちらもしばらくは新たに恋人を作る気になれない。でもセックスは? 互いに利害が一致したふたりは、「セックスありの友情」を育んでいくことに決めたのだが……。
『ソーシャル・ネットワーク』でナップスターの創始者ショーン・パーカーを演じたジャスティン・ティンバーレイクと、『ブラック・スワン』でナタリー・ポートマンのライバル役を演じたミラ・クニス主演のラブコメディ。恋愛映画は始まった瞬間に「この人とこの人がくっつく」とわかるので、あとは「くっつく」までの過程をどうやって回り道させるかが作り手の腕の見せ所になる。誤解があったり、喧嘩があったり、自分の本当の気持ちに気づかなかったり、あるいは気持ちに気づいても正直になれなかったり、恋のライバルが現れたり、何らかのタイムリミットを用意したりして、わかりきったゴールに至る道筋を長く長く引き延ばして行く。この映画もそれは同じだ。しかし主人公たちが「いつくっつくか」という部分について、この映画は早々にふたりをくっつけてしまう。
現実の世の中を見れば、今どき「セックスすればそれで万事OK」なんてあり得ないことを誰でも知っているはずなのに、映画の世界は現実の世界よりずっと保守的だ。主人公たちをベッドインさせることで結婚を暗示させ、それでめでたしめでたしとするのは『或る夜の出来事』(1934)の頃から何も変わっていない。映画の観客というのは意外にしぶとく保守的で、映画を観ていて安心できることを望むのかもしれない。しかしこの映画はその定石を崩す。物語の序盤で主人公たちをくっつけて、その後でウロウロさせる。もちろんこのパターンも過去に何度も行われているわけだが、主人公たちがくっついた後になって、ヒロインが改めて本当の恋を求めるため別の男と一夜を共にするエピソードはちょっとユニークかもしれない。映画の中の約束事として、最近の映画はこうしたことを避けてきたように思うからだ。でも実際の男女関係では、今どきこうした関係が現実かもしれない。それがいいとか悪いとかは別として、こうした感覚は確かにあるはずなのだ。
配役が結構豪華。ゲイの同僚役でウディ・ハレルソンの他、父親役のリチャード・ジェンキンス、姉役のジェナ・エルフマンなどで脇をしっかりガード。スノボ選手のショーン・ホワイトが特別ゲスト出演している。
(原題:Friends with Benefits)
DVD:ステイ・フレンズ
サントラCD:Friends With Benefits 関連DVD:ウィル・グラック監督 関連DVD:ジャスティン・ティンバーレイク ミラ・クニス |