ラスト・エクソシズム

2011/08/04 松竹試写室
インチキ悪魔祓いで稼ぐ牧師が本物の悪魔に出会う?
全米ナンバーワンヒットのホラー映画。by K. Hattori

Lastexorcism  ルイジアナ州第2の都市バトンルージュで親の代から牧師をしているコットン・マーカス牧師は、これまで40数件の悪魔祓いを行ってきたエクソシストでもある。ただし本人は悪魔などまるで信じていないし、最近では神に対する信仰すら怪しくなってきている。彼の行う悪魔祓いは限られた見物人を相手にした手品のようなものだが、悪魔に憑依されたと信じる人にとっては確実に癒やしの効果を持つ迫真のパフォーマンスだった。しかしマーカス牧師は、そろそろ悪魔祓いから手を引こうと決めている。彼のように悪魔の不在を前提にして儀式を行う場合は危険がないのだが、世の中には本気で悪魔の存在を信じる狂信的な人々も多い。そうした人が悪魔祓いの儀式をすると、熱が入りすぎて対象者が死亡する危険すらあるのだ。マーカス牧師は自分の行う悪魔祓いの手口をドキュメンタリー映画として公表することで、悪魔がこの世にいないことや、悪魔祓いの危険性を世に訴えることを決意する。映画撮影隊を伴って行う次の儀式こそ、マーカス牧師にとって生涯最後のエクソシズムになるはずだった……。

 インチキくさい悪魔祓いの儀式を撮影していたら、そこに本物の悪魔が現れて大変なことになるという、フェイクドキュメンタリー(モキュメンタリー)風のホラー映画。カメラの視点は常にカメラマンからの一人称視点だが、手持ちのカメラをやたらに振り回して観客のカメラ酔いを誘う映画というわけではない。(そういう場面もあることはある。)この映画では演出手法としてドキュメンタリー風のテイストを入れてはいるものの、話自体はわりとよく考えられている。ホラー映画だから、映画の最後に本当の悪魔が現れてどうにかなってしまうことは観客もあらかじめ期待しているわけだが、そこまでの紆余曲折に一応のリアリティがあるのだ。「悪魔などいない」「悪魔祓いなど嘘っぱち」という、観客の多くが信じている現実を共有しながら、最後の最後に「やっぱり悪魔はいた(のかも)」という非日常にジャンプしてみせる構成はなかなか面白い。それまではミステリー映画のように、登場人物たちが事件の真相を合理的に探っていく物語になっている。

 ただしこの映画にそれほど新鮮味があるわけではない。信仰を失いかけた聖職者が、悪魔祓いの儀式を通して自らの信仰を問い直すというストーリーは『エクソシスト』を踏まえたもの。映画の最後にあるどんでん返しは、『エクソシスト』の5年前に製作された有名ホラー映画と同じだ。この映画はそうした古典的なアイデアに、最近流行りのドキュメンタリー映画風の一人称カメラ映像を加えて新しく仕立て直しているわけだ。

 映画導入部では編集済みのドキュメンタリー映画のような体裁でスタートし、途中から未編集映像素材のようになってしまうスタイル。これは疑似ドキュメンタリーというスタイルが、もはやひとつの演出技法として定着していることの現れだろう。

(原題:The Last Exorcism)

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10月8日公開予定 シネマ・サンシャイン池袋、新宿バルト9ほか全国ロードショー
配給:コムストック・グループ、クロックワークス 宣伝:アルシネテラン
2010年|1時間27分|アメリカ|カラー|シネスコ|ドルビー
関連ホームページ:http://www.lastexorcism.jp/
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
DVD:ラスト・エクソシズム
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