復讐捜査線

2011/06/10 アスミック・エース試写室
目の前で娘を殺された刑事がたどり着いた事件の真相。
メル・ギブソン8年振りの主演作。by K. Hattori

Fukusyusousasen  1985年にイギリスBBCで制作された全6話のTVミニシリーズ「刑事ロニー・クレイブン」を、テレビ版の演出を担当したマーティン・キャンベル監督の手でリメイクしたアクション・スリラー映画。主演は『サイン』以来8年振りの主演作となるメル・ギブソン。オリジナル版の舞台はイギリスだったが、映画版は舞台をボストンに移している。メル・ギブソンは50歳代半ばになっているが、今回の役はその年齢に見合ったもの。休業中(?)は舌禍事件やスキャンダルで芸能マスコミを賑わせていたギブソンだったが、今回は彼の「困った乱暴者」というパブリックイメージがうまく役柄と結びついて、キャラクターの内面を豊かにしているかもしれない。ひょっとするとこの役はもっと温厚なものなのかもしれないが、ギブソンが演じると「このオヤジは何かあるとブチ切れる」という危うさがまとわりつく。結果としてはこれがよかったかもしれない。クライマックスで主人公がついに怒りを爆発させるシーンなど、ギブソンが演じるとはまるのだ。

 ボストン警察に勤務する殺人課の刑事トーマス・クレイブン宅で、残虐な殺人事件が発生した。久しぶりに実家に戻っていた娘エマが、クレイブンの目の前で射殺されたのだ。犯人は撃つ直前に「クレイブン!」と叫んでいた。行きずりの犯行ではない。警察は何者かがクレイブンに恨みを持って犯行に及んだと考えるが、本人はまったく心当たりがなかった。クレイブンは娘の残した荷物や住所録を調べ、犯人の目的は自分ではなく、最初から娘を殺すことが狙いだったのではないかと考える。娘の友人やBFがひどく怯えているのはなぜか。娘の勤務先にある秘密めいた雰囲気。クレイブンに近づいてくる正体不明のイギリス人ジェドバーグの目的は何か。彼は敵なのか、それとも味方なのか。やがてクレイブンは、娘が告発しようとしていた勤務先企業の秘密業務を暴き出してゆく。

 一件の殺人事件が、政府高官・政治家・軍需産業が関わる巨大な不正につながっていくスケールの大きな物語。ただし映画は主人公と娘の個人的なつながりを基軸にして、そこからあまり世界観を広げられなかった。映画全体を包む「大きな物語」と、映画の中心にある「小さな物語」の間にある空間を埋められず、ふたつの物語が噛み合わないまま空回りしているように思うのだ。これはトータルで5時間以上の時間をかけられるTVミニシリーズと、2時間以内ですべてを完結させなければならない映画の違いかもしれない。映画はエピソードが駆け足になっているわけでも、ダイジェスト版のようになっているわけでもないが、どこか肝心なところがスッポリ抜け落ちているような印象が残ってしまう。これは「大きな物語」の狂言回しであるジェドバーグが、やや中途半端な扱いになっているのが原因かもしれない。キャラクターとしては魅力的なのだが、最後までつかみ所のない人物だ。

(原題:Edge of Darkness)

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7月30日公開予定 新宿ミラノ
配給:ポニーキャニオン 宣伝:スキップ
2010年|1時間56分|アメリカ、イギリス|カラー|シネマスコープ|ドルビーデジタル
関連ホームページ:http://www.fukushuu-movie.com/
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
DVD:復讐捜査線
オリジナルTVシリーズDVD:Edge of Darkness
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