それでも花は咲いていく

2011/03/22 TCC試写室
前田健の原作・脚本・監督で描く3つの失恋ストーリー。
個人的には第1話が面白かった。by K. Hattori

Soredemohana  お笑い芸人の前田健が、原作・脚本・監督を担当した全3話のオムニバス映画。一昨年発表された同名原作は9つの短編で構成されているが、今回の映画はそのうち3つのエピソードを映画化している。以下、簡単なあらすじと感想。(映画に紹介されているわけではないが、タイトルになっている花の花言葉も添えておく。)

 第1話は「エーデルワイス」。花言葉は「大切な思い出」「忍耐」。東京の進学塾で講師をしていた戸山勝は、ある事件をきっかけに講師の仕事を辞めて、今は京都で家庭教師の仕事をしている。彼はこの仕事が大好きだ。なぜなら受け持っている安藤家には、彼の恋する相手がいるから。受け持ち生徒の妹で、まだ小学生の奈美に、戸山は夢中になっているのだ。だがこれは許されぬ恋。決して気持ちを表に出してはならない、辛い恋なのだ。だがある夜、彼は東京から修学旅行に来ていたかつての受け持ち生徒にばったり再会するのだった……。主人公の勝が部屋に帰り、引き出しの中にしまってあったラブレターを破り捨てるシーンがいい。捨てなければと思いつつ、捨てられない気持ち。それを自ら破り捨てる苦しさと切なさ。

 第2話は「ヒヤシンス」。紫の花の花言葉は「初恋のひたむきさ」。容姿にコンプレックスがあるため女性と交際することができない男が主人公。彼にとって唯一の趣味は、若い女性の部屋に忍び込んで中の様子を観察し、その姿や暮らしぶりを妄想すること。同じ部屋には二度と入らないことを自らの戒めにしていた男は、ある部屋とその住人メグミに興味を持って再びそこを訪れる。なんとメグミのパソコンには、侵入した男へのメッセージが残されていた。その日から、男とメグミの交換日記のようなメッセージのやりとりが始まるのだが……。一人称のボイスオーバーが続くことから、その後の成り行きは予想が付くのだが、それでもこの幕切れは残酷。

 第3話は「パンジー」。花言葉は「物思い」。作曲家を目指して結局芽が出ないまま30過ぎになってしまった幸二にとって、母親の死は大きな衝撃だった。いつも大きな愛情で自分を支えてくれた母に、幸二は普通の親子以上の感情を抱いていたのだった……。絵に描いたようなエディプスコンプレックスの物語。前2話に比べると、変態度はかなり薄いような気がする。少なくともこれは犯罪じゃない。男女間のもどかしい気持ちの葛藤を描く前2話に対し、このエピソードのテーマは「父と息子」なのだ。失恋物語としても、対象の死から始めるのはやや変化球だろう。

 個人的に一番面白かったのは第1話で、主演の仁科貴も上手いし、相手役の大出菜々子もよかった。ふたりが路上で抱き合うシーンなどは、映画を観ていてどきどきしてしまった。「お兄ちゃん、あぶないで!」は名言。第2話は滝藤賢一が熱演しているが、肩の力を抜いたカンニング竹山のワンポイント出演も光っていた。

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5月7日公開予定 テアトル新宿、キネカ大森
配給:ケイダッシュステージ、リンクライツ 宣伝:フリーマン・オフィス
2011年|1時間57分|日本|カラー|ヴィスタ|ドルビー
関連ホームページ:http://soredemohanawasaiteiku.com/
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
DVD:それでも花は咲いていく
原作:それでも花は咲いていく
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