再会の食卓

2010/11/01 シネマート六本木(スクリーン4)
国共内戦によって引き裂かれた夫婦が半世紀ぶりに再会。
実話をもとにした中国映画。by K. Hattori

Saikainosyokutaku  第二次大戦が終了した翌年の1946年。それまで反目しつつも協力して日本軍と戦っていた中国共産党と国民党の関係は決裂し、双方の間で最後の内戦が行われることとなった。ソ連から支給された最新装備で武装する共産党軍に追い詰められ、国民党は台湾まで撤退。1949年のことだ。だがこの際、中国本土には国民党軍兵士たちの家族が多数残されてしまった。戦争が引き起こした、家族分断の悲劇だ。それから半世紀近くたったある日、上海に暮らすユィアーという女性のもとに、台湾から1通の手紙が届く。手紙の差出人は台湾人のリゥ・イェンション。彼は1949年に上海から台湾に逃れた元国民党軍兵士であり、台湾と中国の交流が途絶えた後は帰国を諦め台湾で結婚して暮らしていたのだという。だが連れ添った妻が亡くなった今、考えるのは台湾に残した妻のことばかり。死ぬ前にぜひ妻に会いたい。その妻という女性こそ、今は上海で夫や子どもや孫たちに囲まれて暮らすユィアーなのだ。子供たちは「台湾人なんかに会う必要はない」と言うのだが、夫のルー・シャンミンはむしろ彼を歓迎しようと言う。かくして約半世紀ぶりに、別れた夫婦の再会となったのだが……。

 戦争によって分断された家族というと、日本人なら中国残留孤児の問題を思い出すし、お隣の韓国には南北離散家族の問題がある。しかしそれと同じような状況が、中国と台湾の間にあることを初めて知った。いやこれは、それに初めて気づいたと言った方が正確だろう。台湾と中国の歴史については、概略的なことならもちろん知っている。中国で20世紀初頭から国民党と共産党の間に対立があり、対日戦争中は両者が共同歩調を取ったものの、日本の敗戦で国共対立が再燃して内戦となり、国民党は敗れて台湾に逃れた。これはアジア近代史の常識だ。でも逃げ出した国民党軍の「家族」のことは、これまで考えたこともなかった。もちろん、彼らにも家族はいたのだ。その中には、夫や子供たちとともに台湾に渡った者もいただろう。でも本土に取り残されたまま、残りの人生を送ったものもいた。少し考えればすぐわかりそうなことだが、僕はそのことにこの映画を観るまで気づかなかったのだ。

 実話をもとにしたというストーリーだが、登場人物たちの造形がそれぞれ見事。これは脚本と俳優たちの功績だと思う。「私はこれまで夫に愛されてこなかったし、私も夫を愛したことはない。私が愛しているのは元夫だけ。彼と一緒に台湾に行きたい」と言う妻に対して、「お前の言う通りだ。私には構わず台湾に行きなさい」と言う夫。元妻を迎えに来た男も「今の旦那さんに申し訳ないから、少ないけれどお金で解決しよう」とか言い出す始末。僕はこうした様子を観てあ然としてしまったが、映画の終盤で夫が自分の人生を振り返って大いに愚痴るシーンでは、彼の本心がようやく見えたようでホッとするのだ。これが男の愛だよなぁ……。

(原題:團圓 Apart Together)

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2011年正月第2弾公開予定 TOHOシネマズシャンテ
配給:ギャガ
2009年|1時間36分|中国|カラー
関連ホームページ:http://shokutaku.gaga.ne.jp/
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
DVD:再会の食卓
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