うまれる

2010/09/07 ショウゲート試写室
「新しい命の誕生」についてのドキュメンタリー映画。
出産シーンには感動しました。by K. Hattori

Umareru  「子供をうむこと」「子供と出会うこと」をテーマに、4組の夫婦を取材したドキュメンタリー映画。母親に虐待された経験から自分自身が母親になることに不安を感じる妊婦と、そんな妻を支えようとする夫。身ごもった子供に先天的な障碍があることを知りながら、子供を産んで共に生きるという選択をした夫婦。出産予定日に前日まで元気に動いていた子供を死産し、我が子を失った喪失感を乗り越えていこうとする夫婦。長い不妊治療の末に、子供のいない人生を受け入れた夫婦。映画の中には他にも多くの母親や子供のインタビュー取材が収録されていて、その中にはシングルで子供を出産した女性の話なども出てくる。だが完成した映画は「4組の夫婦」の物語になった。この映画のテーマは「夫婦」なのだ。人生の同伴者として夫婦の間にはいろいろなことが起こるわけだが、この映画では「子供がうまれる」という切り口から、互いに支え合って生きるさまざまな夫婦像を見せてくれる。見えてくるのは「夫婦」を核とした愛の物語(ラブストーリー)だ。

 映画で「こんな話がある」として語られるのは、子供の何割かが母親の胎内にいたときに記憶(胎内記憶)を持っているというの話と、生まれる前の子供は雲の上から地上の様子を見て親を選んでいるという話。僕自身はこれをどちらもヨタ話だと思っているのだが、それはこれらの話が文字通りそういうものだと言われると「バカな話をするな!」という反応になるということであって、こうした話を生み出す「気持ち」自体を否定する気にはなれない。子供というのはとても不思議なもので、子供が成長するに従ってそこに否定しがたいひとりの人間としての「個性」や「人格」が現れるのは、不思議どころか驚異ですらある。そうした個性や人格は、何もないところから自然に発生したと考えるより、目に見えないどこか別の世界から「やって来た」と考えた方がずっと自然に思えることがある。また超音波検診などでお腹の中の子供が動いている様子をモニタで観察していると、まだ生まれていない赤ん坊であっても、そこに確実に「命」が存在し、手足を必死に動かして自己主張していることもわかる。

 子供ができる、子供が産まれるという出来事は、科学がどんなに発達しても、いまだ人間にとってワンダー(wonder)であり続けている。特に生まれて初めて出産を経験する女性やその配偶者にとって、新しい命の誕生は言葉で説明できない神秘との遭遇なのだ。芽生えた命に対する驚きと畏れが、胎内記憶や親を選んでくる子供という「物語」を生み出す。物語自体は嘘っぱちでも、その背後にある想いの大きさは本物だ。

 僕としては「嘘っぱち」の物語をわざわざCGにしたり、アニメにしたり(歌まで付く)するセンスにがっかりさせられてしまう点もあるのだが、それでもこの映画をより多くの人に観てもらいたいと思う。感動して泣いちゃうよ。

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11月上旬公開予定 シネスイッチ銀座
配給:マジックアワー
2010年|1時間44分|日本|カラー|ビスタサイズ|DTS STEREO
関連ホームページ:http://www.umareru.jp/
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
DVD:うまれる
関連書籍:うまれる かけがえのない、あなたへ(豪田トモ)
関連DVD:豪田トモ監督
関連DVD:つるの剛士
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