Colorful カラフル

2010/08/31 TOHOシネマズ錦糸町(スクリーン5)
森絵都の同名ジュニア小説を原恵一が長編アニメ映画化。
アニメーションとは「記号」である。by K. Hattori

Colorful  森絵都の同名小説を、『河童のクゥと夏休み』の原恵一監督が長編アニメーション化。同じ原作は10年前にも中原俊監督が実写映画化していて、今回はいわばそのリメイクにあたる。ただし先行する実写版はまったく話題にならなかった映画で、今回の映画をきっかけにして初めて実写版の存在に気づいた人の方が多いはずだ。脚本が森田芳光、音楽が池辺晋一郎、主演の田中聖(KAT-TUN)はこれがスクリーンデビュー作だった。今公開すればかなり話題になると思うので、アニメ版のDVD化に合わせて再版するかもね。

 一度死んだものの生前に犯した大きな罪を償うため、再び地上に戻されたひとつの魂。その魂は自殺騒ぎを起こした中学生・小林真の肉体を借りて、魂の修行のための新生活をはじめる。目的は修行の中で、自分の犯した罪を思い出すこと……。病院で目を醒ました真を家族は大歓迎。「こんな暮らしも悪くない」と思う「真」だが、家族は重大な秘密を抱え込んでいた。母は不倫している。父は家族から軽蔑されている。ガリ勉の兄は真をバカにしている。家族はバラバラだ。学校に行けば、小林真は劣等生でいじめられっ子。受検は目の前なのに志望校も決まらず、憧れている後輩の少女は援交しているありさま。「真」にとって小林真の人生などしょせん他人事だとは思いつつ、その境遇には腹が立つやら情けないやら。あの世から案内役として「真」に付いてきた案内役プラプラは、気になることをずけずけ言うかと思うと肝心なときには姿を消してしまう。「真」の修行はどうなるのか? 「真」が犯した罪とは一体何なのだろうか?

 先行する実写版があることでもあるし、僕はこの映画に「アニメーションならではの表現」「アニメーションでなければ不可能な表現」を求めるわけだが、表面的にはそうした要素はあまりない。この映画はそのまま実写映画化できそうだ。ただしそれは、アニメ版とは似ても似つかぬ映画になるだろう。観るものをウンザリさせる映画になるか、あるいはボンヤリとした印象の薄い映画になるか、たぶんどちらかだと思う。

 実写に比べると、アニメは映像が持つ「情報」の純度が高いのだ。ゼロから絵作りをしているアニメは、画面の中に作り手の意図しないノイズが紛れない。風景や日常空間の描写はもちろん、登場人物が意図せず見せる動作や息づかいまで、作り手が完璧にコントロールできる。どれほどリアルに見えようとも、アニメーションは人間も風景もすべて「記号」だ。対象が記号だから、観客はそこに自分のイメージする「現実」を投影することが出来る。実写映画に比べるとアニメ版というのは、ずっと「活字の本」に近いのかもしれない。

 音楽の使い方がいい。美術室で真とひろかが会話をするシーンで、アンジェラ・アキの「手紙」が聞こえてくるシーンはよかった! エンディングの「青空」(ブルーハーツのカバー)もいいね。

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8月21日公開 TOHOシネマズみゆき座ほか全国東宝系
配給:東宝
2010年|2時間7分|日本|カラー|ビスタサイズ|ドルビーデジタル
関連ホームページ:http://colorful-movie.jp/
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
DVD:Colorful カラフル
サントラCD:Colorful カラフル
原作:カラフル(森絵都)
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