パーフェクト・ブルー

2010/08/03 SPE試写室
宮部みゆきの同名デビュー小説を豪華キャストで映像化。
高校球児の焼死体からはじまるミステリー。by K. Hattori

Perfectblue  『パーフェクト・ブルー』というタイトルを聞いて映画ファンが思い出すのは、1998年に今敏監督がアニメ映画化した『PERFECT BLUE/パーフェクト ブルー』や、そのリメイクと称した2002年のサトウトシキ監督の実写映画『夢なら醒めて……』だ。どちらも原作は竹内義和。しかし今回の映画『パーフェクト・ブルー』は、それとはまったく無関係。原作は宮部みゆきの同名デビュー小説で、ミステリファンにはよく知られている作品なので映画化したからといって別のタイトルにするわけにもいかない。

 高校野球のスーパースター諸岡克彦が殺害され、容疑者である元チームメイトも死体で発見された。諸岡家から克彦の弟・進也の捜索を依頼されていた蓮見探偵事務所の調査員・加代子は、マスコミから好奇の目で見られる進也を事務所に匿うと同時に、事件直前に克彦が接触していた結城という男が事件解明の鍵を握っていると考える。じつは結城はある事柄をネタにして、製薬業界大手の三友製薬を脅迫していたのだ。結城との交渉窓口となった総務課長の木原は、会社がかつて行っていた違法な実験について知ることとなる。その鮮やかな色から「パーフェクト・ブルー」と呼ばれていた薬品こそが、すべての悲劇の元凶なのだ……。

 WOWOWのドラマWで放送された、スペシャルドラマの劇場公開版。宮部みゆきの小説はこれまでに『理由』と『長い長い殺人』が、同じ形式でテレビ放送後に劇場公開されている。今回の作品も、最初からある程度劇場公開を想定して製作されているのだろう。この作品は「もともとTVドラマだった」などという先入観なしに見れば、まったく通常の映画と遜色がない。それどころか、配役、撮影、ロケーションなど、インディーズも含めた日本映画の平均値よりも上位の水準にあるとさえ思える。映画はいくつかの章に分けられていて、それぞれが異なる登場人物の視点で語られていくオムニバス風の群像劇。各章で扱われる時間は、重なり合う時もあれば、重なり合わない時もあるが、それらが持ち寄られて全体としてより大きな絵が浮かび上がってくるという仕掛けだ。

 映画の前半から中盤にかけてはじつに面白かった。エピソードの組み立てなども優れているわけだが、それより上手いと思わせるのはキャスティングとキャラクター造形だ。諸岡家の放蕩息子・進也などは、登場した途端に「こいつはいい奴だ!」と確信できるキャラクターになっているし、三友製薬の木原総務課長も単純な脇役ではない奥行きのあるキャラクターになっている。甲本雅裕が演じる宮本刑事の寡黙さもいい。しかしこうしたアンサンブルが、映画のクライマックスで「事件の真相」が語られるシーンになると瓦解してしまうのは残念。こんな展開にするなら、探偵役は宅間伸よりむしろ、このジャンルの帝王・船越英一郎の方が似合いではないか。

9月18日公開予定 角川シネマ新宿、シネプレックス系にて限定ロードショー
配給:角川シネプレックス 宣伝:スキップ
2010年|2時間|日本|カラー
関連ホームページ:http://www.wowow.co.jp/dramaw/blue/
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
DVD:パーフェクト・ブルー
原作:パーフェクト・ブルー(宮部みゆき)
関連DVD:下山天監督
関連DVD:加藤ローサ
関連DVD:中村蒼
関連DVD:津田寛治
関連DVD:小市慢太郎
関連DVD:甲本雅裕
関連DVD:藤田朋子
関連DVD:升毅
関連DVD:大杉漣
関連DVD:宅間伸
関連DVD:石黒賢
ホームページ
ホームページへ