踊る大捜査線 THE MOVIE 3

ヤツらを解放せよ!

2010/07/13 楽天地シネマズ錦糸町(CINEMA 1)
劇場版3作目はもはやセルフパロディのようにしか見えない。
このシリーズもこれにて打ち止め。by K. Hattori

Odoru3  1997年にテレビ放送が始まり、翌年には劇場版が公開されて大ヒットした人気シリーズの最新作。今回の映画は2003年の劇場第2弾『踊る大捜査線 THE MOVIE 2 レインボーブリッジを封鎖せよ!』以来7年ぶりの映画版第3作となる。その間にも『交渉人 真下正義』や『容疑者 室井慎次』といったスピンオフムービーがあり、そこからさらに派生した『逃亡者 木島丈一郎』や『弁護士 灰島秀樹』というドラマもあったりと話題は尽きなかったわけだが、織田裕二扮する青島刑事の登場は今回本当に久しぶり。そういう意味で、やはりファンにとっては待望の最新作なのだと思う。

 この映画を新たな『踊る大捜査線』に向けての仕切り直しと見る人たちも多いようだが、僕自身が映画から受けた印象は「スタッフやキャストからファンに向けたお別れのカーテンコール」でしかなかった。カーテンコールでは出演者一堂が顔を揃え、観客に向かってお辞儀して手を振ればいい。この映画にはシリーズの過去作品に出演した主要な登場人物が残さず出演しているし(いかりや長介も声だけだが出演)、犯人として逮捕され物語から退場したはずの人物たちも再登場している。2時間を超える映画は、スタッフとキャストによるやりたい放題。笑わせて、ハラハラさせて、ホロリとさせて、爆笑させて、シンミリさせて、またニヤニヤさせられてと、緩急自在に『踊る大捜査線』的な世界を堪能させてくれる。映画版第1作で黒澤明の『天国と地獄』を引用したことが話題になったが、今回の映画では主人公の青島が医者からガンを宣告されて一度はひどく落ち込むが、やがて死ぬ気になって仕事に突っ走るという展開。これって黒澤の『生きる』でしょうかね……。

 全体としては十分に楽しい作品ではあるのだが、僕は映画を観ながらシリーズの終焉を確信していた。このシリーズは、いよいよここで行き止まりなのだ。シリーズの終わりを決定づけるような要素も、映画の中にいろいろ散りばめられている。例えば湾岸署名物のスリーアミーゴスは、新署長就任によってお払い箱になる。青島のライバルであり盟友でもある室井慎次は、警察官僚のエリートとして捜査の現場から「政治の世界」に入っていく。水野美紀扮する雪乃は専業主婦になったようで、もうシリーズに再登場することはなさそうだ。映画の中で現実の世界と同じように時間が流れる『踊る大捜査線』においては、登場人物たちの境遇も日々変化してゆかざるを得ない。主要登場人物のすべてを、同じひとつの物語世界の中に閉じ込めておくことは困難なのだ。そんなことをしていれば、世界はどんどん閉塞して行ってしまう。その息苦しさは、今回の映画からも伝わってくるのだ。

 今回の映画の副題『ヤツらを解放せよ!』の「ヤツら」とは、『踊る大捜査線』の主要キャストやスタッフたちのことに思えてならない。もうそろそろ、彼らをこの作品から解放してやろう……。

7月3日公開 TOHOシネマズ 日劇ほか全国東宝系
配給:東宝
2010年|2時間21分|日本|カラー|シネマスコープ|ドルビーデジタル
関連ホームページ:http://www.odoru.com/
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
DVD:踊る大捜査線 THE MOVIE 3/ヤツらを解放せよ!
サントラCD:踊る大捜査線 THE MOVIE 3 ヤツらを解放せよ!
ノベライズ:踊る大捜査線 THE MOVIE 3 ヤツらを解放せよ!
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