ベスト・キッド

2010/06/16 スペースFS汐留
北京の学校でいじめられていた少年が達人からカンフーを習う。
1980年代のヒット作をリメイク。by K. Hattori

Karatekid  1984年に第1作が製作されて以来、直接の続編2本と番外編的な続編1本の計4作品が作られた同名人気シリーズのリメイク版。オリジナルのシリーズでは日系人俳優のノリユキ・パット・モリタ(既に故人)が空手の師匠ミヤギを演じ、いじめられっ子のラルフ・マッチオ(最近すっかり消えてしまった俳優)を鍛えていた。今回の映画ではシリーズ1作目のストーリーをなぞりつつ、物語の舞台をアメリカから中国に移している。原題はオリジナル・シリーズと同じ『The Karate Kid』だが、舞台が中国だからそこで習う武術は空手ではなくカンフーだ。師匠を演じるのはハリウッドでも活躍するカンフー映画の大スター、ジャキー・チェン。彼にカンフーを習うアメリカ人少年を、『幸せのちから』のジェイデン・スミスが演じている。プロデューサーには彼の両親であるウィル・スミスとジェイダ・ピンケット・スミスが名を連ね、映画のエンドクレジットでは現場スチルの形で顔を見せている。監督は『ピンクパンサー2』のハラルド・ズワルト。

 主人公の少年ドレ・パーカーは、父親を亡くして母と二人暮らし。だが母親が中国の自動車工場に転勤になった都合で、親族や友人の多かったデトロイトから北京に引っ越すことになった。社交的なドレは早速、近所に住む美しい中国人少女と親しくなる。だがそんなドレに敵愾心をむき出しにするのが、同じ学校に通う中国人少年チョンと仲間のグループだった。「いじめではなく、試合で勝負しよう」。ドレはアパートの管理人をしている中年男ハンから指導を受けて、間もなく開催されるカンフー大会でチョンたちと戦うことになる。ところがハンのカンフー指導は、ドレにとってまったく予想外のものだった。

 オリジナル版では車のワックスがけや壁のペンキ塗りが空手の基礎トレーニングになっていたが、このリメイク版では上着を脱いだり着たりの繰り返しがじつはカンフーの稽古になっている。どちらも「そんなバカな!」という話ではあるのだが、そこが映画のファンタジーというものなのだろう。だが映画がいかに荒唐無稽でバカバカしかろうと、そこに描かれている人間が本物であれば人は本当の感動をそこで味わうことができる。この映画には、本物の人間が描かれている。ジェイデン・スミス演じるドレがいい。思春期に差し掛かろうとする少年が母親の保護を離れて巣立って行く様子が、じつに丁寧に描写されているのだ。彼が母親に向かって「北京なんて大嫌いだ!」と感情を爆発させるシーンに、僕はついホロリとしてしまう。どん底気分になった主人公がその場から逃げ出してしまいたいと叫ぶこのシーンは、この映画の前半の核。これがあるからこそ、トレーニングのシーンに説得力が生まれるし、最後の試合シーンに主人公の成長を見て感動してしまうのだ。吹替なしでカンフーに挑んだジェイデンは立派。今後も楽しみなハリウッドの若手俳優だ。

(原題:The Karate Kid)

8月14日公開予定 新宿ピカデリーほか全国ロードショー
8月7日・8日先行上映決定(一部劇場を除く)
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
2010年|2時間20分|アメリカ|カラー|スコープサイズ|SDDS、ドルビーデジタル、ドルビーSR
関連ホームページ:http://www.bestkid.jp/
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
DVD:ベスト・キッド
DVD (Amazon.com):The Karate Kid
関連DVD:ベスト・キッド(オリジナル・シリーズ)
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