パラレルライフ

2010/06/15 東映第1試写室
30年の時を隔てて同じ運命を歩む男の恐怖と悲劇。
アイデアは面白いが懲りすぎかも。by K. Hattori

Parallel_life_2  若き法律家のエースとして、36歳という史上最年少で判事部長に任命されたキム・ソクヒョン。だが彼の幸福な生活は、妻が何者かに惨殺されたことから一変。この出来事をきっかけに、ソクヒョンは「パラレルライフ理論」と真剣に向き合わざるを得なくなる。その理論は、異なった時代に生きる別々の人間が、まるで複写機でコピーしたようにまったく同じ人生を歩むというもの。今からちょうど30年前、自分と同じ年で同じように判事部長になったハン・サンジュンという人物が、同じ日に同じ場所で同じように妻を殺されている。これは単なる偶然なのか? ハン判事はその後、逃走した容疑者に我が子共々殺されている。妻を失った自分と残った娘も、ひょっとしたらハン判事と同じような運命をたどるのではないか? ソクヒョンは30年前に起きた、ハン判事の事件を調べはじめるのだが……。

 パラレルライフというのは実際にある理論で、オカルトめいた超常現象解釈のひとつの例だ。しばしば持ち出されるのは、暗殺されたアメリカの大統領エイブラハム・リンカーンとジョン・F・ケネディの事例。ふたりはちょうど100年の時を隔てて、同じような人生を歩んでいるという。もちろんこんなことは、懐疑的な人間ならまったく興味を示すことのない「偶然の一致」で済まされてしまう。ふたりの人間の人生には、異なっていることの方が遙かに多いからだ。例えば生年はちょうど100年の隔たりだが、没年は2年ずれている。所属政党も、子供の数も、妻の名も異なる。だがパラレルライフ理論の信奉者は、異なっている情報を隠して一致しているものだけを集め、それを「偶然ではあり得ない一致」にしてしまうのだ。

 しかし映画『パラレルライフ』はフィクションだから、そうした点については一切抜かりがない。主人公キム・ソクヒョンと30年前のハン・サンジュンの人生はぴったりと符合し、30年という時を隔てて奇妙なカノンを奏でていく。この映画で前面に押し出されているのは、ふたつの時代のふたつの人生をいかに一致させていくかという技巧だ。主人公が運命の手にもてあそばれる様子にハラハラし、彼が時にそれをうまく出し抜こうとする姿を応援し、しかしそれでもやはり運命の糸がより巧妙に主人公をからめ取っていくことに感心する。そう、この映画で最後に得られるのは「感心する」ということなのだ。ここに感動はない。技巧を凝らした手練手管のテクニックに驚き呆れ感心させられても、それが心を揺さぶる深い感動にはつながらない。それがこの映画にとっては、ちょっと残念なところだ。

 観客が映画にのめり込むには、登場人物への感情移入が欠かせない。義理人情の部分で共感なり反発なりができない登場人物たちは、脚本家が作った物語というボードゲームの上を動き回るコマになってしまう。コマの動きの戦略や戦術に、感心することはあっても、コマの生き死にに感動する人はあるまい。

(原題:Parallel Life)

7月24日公開予定 シネマスクエアとうきゅうほか全国公開
配給:CJ Entertainment Japan 宣伝:アルシネテラン
2010年|1時間50分|韓国|カラー
関連ホームページ:http://www.parallel-life.jp/
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
DVD:パラレルライフ
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