ムラサキカガミ

2010/05/13 ポニーキャニオン試写室
とある学校に伝わる都市伝説「紫の鏡」の真偽とは?
突っ込みどころ満載の学園ホラー。by K. Hattori

Murasakikagami  その高校にはひとつの不気味な噂話が伝わっている。旧校舎の階段踊り場にある大きな鏡の前で、夜の11時35分に「紫の鏡」と5回唱えると、全身が焼けただれた少女の幽霊が現れてとり殺されるというのだ。今から10年ほど前、噂話の真偽を確かめようと好奇心旺盛な女子生徒が校舎に忍び込んだ。翌朝、「紫の鏡」と言った少女は惨殺死体で発見され、その傍らではもうひとりの少女が血まみれのまま呆然とたたずんでいた。生き残った少女は発狂したという。犯人は学校周辺にいた変質者だとも言われているが、真相は不明のままだ……。そして現代。女子テニス部の合宿で旧校舎に泊まることになった少女たちは、この噂話を面白がって問題の鏡を見に行く。ひとりがふざけて「紫の鏡」と5回唱えると……。

 上映時間1時間強の学園ホラー映画。物語の舞台はほとんどが学校内限定で、主人公の女子高生を演じた紗綾と教師役の長澤奈央以外はほとんど無名のキャストという低予算作品だ。話のアイデアはともかく、脚本段階で細部の詰めが甘いためリアリティに欠ける。ホラー映画なんてものは「幽霊が出る」だの「呪い殺される」だのという根本部分が大嘘なのだから、その周囲を入念に本当らしく作り込まないと全体が白々しい嘘のかたまりになってしまう。物語を学校内限定にするにせよ、登場人物の数を制約するにせよ、台詞やちょっとした小芝居で物語の世界に奥行きを出すことは可能なはず。あまり台詞ばかりが先行してしまうと説明調で嫌らしくなるが、それでも「こういうことが起きれば、当然次はこういう状況になるであろう」という常識的な事柄が無視されてしまうと、映画を観ていても白けてしまうのだ。

 例えば合宿中に生徒のひとりが荷物も何もかも残したまま姿を消せば、周囲の友人たちはどういう反応を示すだろう。まずは本人の携帯に電話してみる。次に自宅に電話してみる。自宅に戻っていないことが家族にわかれば、消えた女子生徒の家族はあわてて学校に飛んでくる。臨時の職員会議が招集される。警察に相談する。そこまで追い詰めて初めて、「彼氏と東京に行ったんじゃないか」という話が出てくるわけだ。この話が出た時点で、警察から「とりあえず数日は様子を見ましょう」という話が出る。物事が何も解決していない宙ぶらりんのまま、自体は沈静化して平穏な秩序が回復される。

 合宿が終了した後に、上級生の命令で再度旧校舎に入るというのも不自然。普段使われていない校舎は施錠されているはずだし、画面には旧校舎入り口に貼ってある警備会社のステッカーまで見えている。証拠のビデオを撮って早く帰ろうという話を生徒たちがしているのに、翌朝早くに上級生が様子を見に来るのも話の整合性がとれていない。何事もなくビデオを撮って下級生たちが帰宅してしまったなら、上級生が学校に来てもそこには誰もいないはず。彼女はいったい何を期待して朝の旧校舎にやって来たのだろうか?

6月5日公開予定 シアター・イメージフォーラム(レイトショー)
配給:日本出版販売 宣伝協力:アムモ
2010年|1時間3分|日本|カラー
関連ホームページ:http://murasakikagami.com/
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
DVD:ムラサキカガミ
主題歌「RED」収録CD:この愛であるように(Lay)
関連DVD:三原光尋監督
関連DVD:紗綾
関連DVD:長澤奈央
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