サバイバル・オブ・ザ・デッド

2010/04/23 京橋テアトル試写室
小さな島で対立する一族と墓場から甦った死者たち。
ジョージ・A・ロメロ監督のゾンビ映画。by K. Hattori

Sotd  1968年の『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』で墓場から甦った死者が人間を襲うというアイデアを生み出し、その後のありとあらゆる「ゾンビ映画」の源流となったジョージ・A・ロメロ監督の最新ゾンビ映画。ロメロ監督は『ナイト・オブ〜』から『ゾンビ』『死霊のえじき』に至るゾンビ三部作のあとしばらくゾンビ映画から遠ざかっていたが、2005年に『ランド・オブ・ザ・デッド』でほぼ20年ぶりにゾンビ映画の世界に復帰。その後は時代設定を現代に仕切り直した『ダイアリー・オブ・ザ・デッド』を作り、それが本作『サバイバル・オブ・ザ・デッド』へとつながっている。ゾンビ映画の元祖による、ゾンビ映画の連打攻勢だ。ロメロのゾンビ映画は現代文明批判の色が濃く、それが多くのファンを引きつけてやまない部分でもある。残酷シーンも見どころではあるが、特殊メイクやCGが一般化した今となってはそれだけで作家性を云々できるようなものでもない。ロメロはゾンビ映画という土俵から、現代社会を痛烈に批判する。それこそがロメロのゾンビだ。

 世界各地で死者が蘇りゾンビ化する現象が起きて数週間。元州兵のサージは行く先々で出くわすゾンビとの戦いや、秩序を失って殺伐としていく人間社会のありさまにウンザリし、仲間たちと共にゾンビがいないと言われている島を目指す。だが元島民だったオフリンに案内されて渡った島には、やはりゾンビたちがいた。じつは数週間前、島でも死者たちが蘇り始めたのだ。オフリンはゾンビ化した島民を射殺処理しようと自警団を組織したが、以前から島内で対立しているマルドゥーンにそれを阻まれ島から追い出されたのだ。マルドゥーンはゾンビたちと島内で共存するため、甦った死者を鎖でつなぎ、家畜小屋に閉じ込めて管理しようとしていた。だが死者たちは次々に増えて、今や島内では死者と生きている人間の数が逆転。「死者との共存」を主張してオフリンを追放したマルドゥーンも、今では死者たちを持てあまして射殺処理することが増えてきていた……。

 物語の主人公は元州兵のサージだが、彼を含む武装集団は物語の目撃者として登場する狂言回しだ。閉鎖的な島の人間関係を映画の観客にそれとなく解説するには、島の事情に疎い第三者を紛れ込ませるのが手っ取り早い。映画の序盤ではサージたちが物語をリードする部分もあるが、舞台が島に移って以降彼らは完全に脇役になる。その証拠に、彼らはオフリンとマルドゥーンの対立関係の中で、何ら意味のある働きをしていないのだ。サージたちは物語の傍観者であり、滅びて行く島で起きた事件を観客に伝える「視点」を提供しているだけだ。じつはこれが、この映画の弱さにもなっている。主人公たちにとって島で起きている対立や争いは結局のところ「他人事」。それは映画を観ている観客にとっても「他人事」に過ぎないものなのだ。

(原題:Survival of the Dead)

6月12日公開予定 シネマサンシャイン池袋、TOHOシネマズ六本木ヒルズ
配給:プレシディオ 宣伝協力:スキップ
2009年|1時間30分|アメリカ|カラー|シネマスコープ|ドルビーデジタル
関連ホームページ:http://www.survivalofthedead.jp/
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
DVD:サバイバル・オブ・ザ・デッド
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