ハングオーバー!

消えた花ムコと史上最悪の二日酔い

2010/04/05 WB試写室
バチェラーパーティーのどんちゃん騒ぎから新郎が行方不明に。
ミステリーとドタバタたっぷりの痛快作。by K. Hattori

The Hangover  アメリカ映画に登場する結婚式の名物と言えば、結婚前夜の新郎新婦が親友たちと過ごす「独身最後の夜」のパーティー。男たちは新郎に最後の自由を満喫させるためストリップに繰り出し(パーティー会場にストリッパーを呼ぶこともある)、女たちは結婚を前にした最後の夜をしんみりと語り明かすといったところが定番だろうか。だが2日後に結婚式を控えた親友ダグのため悪友たち3人が用意したのは、歓楽の都ラスベガスでホテルのスイートルームを借り切っての大騒ぎだった。ホテルの屋上で杯を酌み交わし、夜のラスベガスにいざ出陣! だが困ったことに、彼らの記憶はここで途切れてしまう。翌朝猛烈な二日酔いの中で目を覚ますと、メチャクチャに散乱した部屋の中から肝心の新郎の姿が消えていた。いったい彼はどこに? 悪友たちは寝不足と残った酒でフラフラする体を引きずりながら、行方不明になった親友を捜し回る羽目になるのだが……。

 アメリカでは興行的にも大ヒットし、ゴールデングローブ賞を受賞するなど批評家筋にもウケがよかった傑作コメディ。しかし「日本ではアメリカのコメディ映画はヒットしない!」という映画業界の定説があり、この映画も劇場未公開のままDVD市場に直行する予定だった。ところがそれを知った映画ファンたちが、インターネットを使って本作の劇場公開を求める署名活動を開始。その熱意と盛り上がりが認められて、この映画は日本でも劇場公開されることになった。こうした例はこれが初めてではないが、ネットが登場したことで「観客が観たい映画」を映画会社が公開するという小さな流れが成立して定着しつつあることを感じる。

 この映画の話に戻そう。この映画が面白いのは、まず第一に脚本がとてもよく書けているからだ。ストーリーを動かす原動力は何か。それは「欠如」か「過剰」だと物語理論の教科書には書いてある。この映画で「欠如」になるのは親友ダグの失踪。残された3人の男たちは「記憶」を失っている。こうして「欠如」した部分は、きちんと取り戻されなければならない。この映画は3人の男たちがダグを探し、自分たちの消えた記憶を取り戻していく物語なのだ。では「過剰」は何か。それはホテルの部屋に残されていたトラと赤ん坊であり、ホテルの駐車場から引っ張り出されたパトカーであり、降ってわいた結婚話であり、それらをすべてひっくるめて3人の行く手に次々降りかかってくるトラブルの数々だ。この映画は欠如と過剰のふたつを、手際よく出したり引っ込めたりして物語を進行させていく。

 しかしどんなに面白いストーリーも、キャラクターに魅力がなければ面白い映画にはならない。その点この映画は、登場する人物たちがみんな魅力的。ワンシーンだけに登場するような小さな役でも、表情豊かな人物として描き分けられている。映画の大半で消えている新郎のダグについては、来年公開されるという続編に期待しよう。

(原題:The Hangover)

7月3日公開予定 シネセゾン渋谷
配給:ワーナー・ブラザース映画 宣伝:ギャガ
2008年|1時間40分|アメリカ|カラー|シネスコ|SDDS、ドルビーデジタル、DTS
関連ホームページ:http://www.
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
関連DVD:ハングオーバー! 消えた花ムコと史上最悪の二日酔い
DVD (Amazon.com):The Hangover
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