パリより愛をこめて

2010/03/18 新宿ピカデリー(スクリーン2)
ジョン・トラボルタがパリで大暴れするアクション映画。
こんな映画が作れるという現実が驚き。by K. Hattori

Soundtrack  パリのアメリカ大使館で大使の秘書として働くジェームズ・リースには、CIAの秘密捜査官という裏の顔がある。だがやっている仕事は、駐車場のナンバープレートを入れ替えるとか、出先に盗聴器を仕掛けるなどの地味なものばかり。電話で秘密指令を伝えてくる上役には「もっと大きな仕事を」と掛け合うのだが、その日の指令も空港で足止めを食っている別の捜査官を迎えに行くという地味なもの……のはずだった。だがチャーリー・ワックスというこの捜査官、税関でもめたあげくに持ち込みが禁止されている大型拳銃を持ち込んだり、食事に入った中華レストランで従業員たちと大銃撃戦を繰り広げたりと、行く先々でとてつもなくバイオレンスな展開を巻き起こしていく。彼がパリにやってきた理由は何なのか? ジェームズはいきなり地雷原のど真ん中に立たされたようなこの状況から、無事に脱出することができるのだろうか?

 主演はジョン・トラボルタとジョナサン・リース・マイヤーズ。リュック・ベッソンの原案を『アルティメット』や『96時間』のピエール・モレルが映画化したアクション映画だ。中身は軽薄なハリウッド製B級アクション映画のパロディみたいなもの。メチャクチャに強いタフなヒーローがいて、そのタフさを際立たせるために秀才型の相棒を配置して、そこに恋愛のドタバタをからめ、銃撃戦の中で次々に死体の山が築かれ、車が何台か爆発する。こういう映画は大衆的なファストフードかファミレスみたいなもので、出来合いの味付けではあるが一応の空腹は満たせるが、だからといって飛びきり美味いというわけじゃない。いやむしろ、これは下手なんだろう。下手でもそれが気にならないように、事前にセントラルキッチンで調理済みのものや冷凍されたものが運ばれ、注文ごとに電子レンジでチンしているような味だ。それでも不味くはない。とりあえずデートでもするか、とりあえず映画でも観るか、とりあえず月並みなアクション映画でも観ておくか、という時に重宝するような、観た後に何も残らない、これを観たとしてもそれで人生が変わるような人が全世界にただひとりもいないような、そんな映画なのだ。この映画を一言で言い表すなら、それは「凡庸」だ。

 僕はこの映画の内容そのものより、この映画がどのような仕組みで成り立っているかを考える方が面白いと思う。この映画はフランス映画だ。フランスの製作スタジオで、フランス人のスタッフが、フランスを舞台にした映画を作っている。ただし映画の主人公はアメリカ人で、ハリウッドから俳優を呼び寄せて、英語で芝居をさせている。最初から世界市場に向けて、ハリウッド映画のマガイモノを作っているのだ。考えてみれば、かつて同じような仕組みで量産されていた映画ジャンルがあった。それはマカロニ・ウェスタンだ。イタリアやフランスではできるのに、日本はなぜ同じことができなんだろうか?

(原題:From Paris with Love)

5月15日公開予定 丸の内ピカデリーほか全国ロードショー
配給:ワーナー・ブラザース映画 宣伝:ブレイントラスト、P2
2010年|1時間35分|フランス|カラー|スコープサイズ|ドルビーSRD-EX、DTS-ES、SDDS
関連ホームページ:http://www.frompariswithlovefilm.com/
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
DVD:パリより愛をこめて
DVD (Amazon.com):From Paris with Love
サントラCD:From Paris with Love
関連DVD:ピエール・モレル監督
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