PSP向けのゲームソフト「喧嘩番長」の劇場実写映画版。ゲームについてはよく知らないのだが、なんでもシリーズ4作目まで出ている人気作らしい。ゲームのジャンルが「ツッパリアクションアドベンチャー」というのが笑わせてくれる。映画の土台になっているのはその3作目。修学旅行に出かけた羅針高校の不良少年・坂本タカシが、全国の高校番長ナンバーワンを決める争いに巻き込まれ、最後は新撰組を率いる池田高校の総長・近藤勇とタイマン勝負をするという、荒唐無稽で底抜けにバカバカしい青春バイオレンスムービー。目と目が合うとバチバチと火花が散る「メンチビーム」などゲーム版のテイストを活かしつつ、『ビー・バップ・ハイスクール』や『岸和田少年愚連隊』シリーズに通じる不良高校生映画の王道をなぞる映画になっている。
この手の不良高校生映画では、大人の俳優が学生服を着て大まじめに不良少年を演じるというのがひとつのお約束でもある。その極地が、例えば竹内力や田口トモロヲが高校生を演じる『岸和田少年愚連隊 カオルちゃん最強伝説』シリーズであったりするわけだが、今回の『喧嘩番長』でも、主人公の坂本タカシを演じている綾部祐二、宿敵・近藤勇を演じる髭男爵の山田ルイ53世など30過ぎのオッサン連中。きちんとこのジャンルのお約束に従ったキャスティングになっているのが楽しい。他の高校生役の俳優たちも、みんなかなりのいい年だ。ここにあるのはリアルな高校生の姿ではなく、寄ってたかって練り上げられた、ほとんど悪ふざけにしか見えない「高校生ごっこ」なのだ。
しかしこの高校生ごっこはなんとも貧乏くさい。これはもう、大まじめにツッパリ高校生をやってもパロディにしかならない時代だという開き直りだろう。例えば今から25年前の『ビー・バップ・ハイスクール』などは大まじめに不良少年アクション映画をやっていて、電車内でケンカが起きると学生が走っている電車から外に投げ飛ばされるという無茶苦茶なシーンがあったりする。(このシーンはビデオやDVDで今観てもビックリするはずだ。こんな撮影が、よくもまあ許されたものだと思う。)『喧嘩番長』ではそれがバスの中での乱闘に置き換えられていて、主人公に叩きのめされた高校生が走行中のバスの窓から外に放り出されるシーンだってちゃんとある。しかしこのシーンでは、バスの速度が超ノロノロ運転。『ビー・バップ〜』の列車から川への転落シーンと比較すれば、その迫力は数万分の1になる。でもいいのだ、これはこういう映画なのだから。
バカバカしい映画ではあっても、物語の骨組みがきちんと出来ているので、盛り上がるべきところできちんと話が盛り上がっていく。男と男が喧嘩をして互いを認め合うとか、ほとんど本宮ひろしの「男一匹ガキ大将」とか「硬派銀次郎」みたいな世界。ケンカに明け暮れる主人公をやきもきしながら見守る同級生の女の子とか、いやいや懐かしくて涙が出ますなぁ。